長編
□4【桃太郎】
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此処は何処だろう
何も見えない
何も聞こえない
寒くも暖かくもない真っ暗闇の空間に私はただ何をするでもなく其処に佇んでいる。
いったいどれくらいの間そうしていたのか、ふと気が付くと何処か遠くの方から何かが聞こえてきた。
その音は私がよく知っているもので、無意識のうちに音に向かって駆け出していた。
音に近付けば近付く程に耳鳴りが強くなった。
まるで危険信号のように。
それでもずっと走り続けた。
其処に行けばもう、後戻りは出来ないと言うのに。
わかっている筈なのに。