恋物語
□あの日から聴こえる橙色のめろでぃ
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中学校に入学してすぐ、まだ子供だった私に、彼は大人びた口調で、その呼び方は止めてほしいと言った。
彼の顔はあまりにも真剣だったから、それ以来二度とシロちゃんなんて呼べなかった。
日番谷くんと私が幼馴染から只のクラスメイトになったのはその頃だった。
高校に入学すると、日番谷くんと私はクラスが離れてしまい、クラスメイトでもなくなった。
容姿端麗、頭脳明晰な彼は、すぐさま女の子達の憧れの人となった。
それに比べて、私は只の女子高生。
遠すぎる彼と私の距離は、自然と2人の会話を無くした。
高校三年生になって、私は日番谷くんと同じクラスになった。
戸惑いもあって、最初はぎこちない会話だった。
しかし幼馴染という力は大きくて、自然と彼との会話が戻ってきた。
少し彼との距離が近づいた。
けど、それも今日で終わり。
「雛森、俺この町を出る事にしたんだ。」
生徒が帰った後の、空っぽの昇降口は、彼の言葉を響かせた。
「へっ・・・どーゆうこと?」
「上京して一人暮らししながら、大学に通うつもりだ。来週の日曜日、出発する予定で・・・いちを幼馴染のお前には、言っとこうと思って。悪かったな、言うの遅くなって。」
どう反応してよいのか解らないまま、沈黙が続いた。
「・・・いつまでむこうに居るの?」
雛森の声は、細くて少しだけ震えている。
「まだ、解んない。ずっと帰ってこないかもしんないし。」
「・・・そっかー、行っちゃうんだ。なんだか、淋しくなっちゃうね。大学のお勉強頑張ってね。」
「おう。」
心の中とは裏腹に、何故だかぺらぺらと言葉が出てきた。
こんな時に、よく笑顔なんかつくれたなぁなんて、自分に感心してしまうほど。
少しだけ近くなった彼と私の距離が、ずっとずっと遠くなった。
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