恋物語
□あの日から聴こえる橙色のめろでぃ
5ページ/6ページ
***
自分が馬鹿みたいに思えてくる。
たぶん、あの女の子は彼女。
なんで気付かなかったんだろう。
あんなにかっこいい男の子に、彼女がいない筈無いのだ。
只の幼馴染に、見送る資格なんてない。
それは、全部彼女の特権。
もし、この感情が恋だというのなら、
―――この恋は、もう終ったんだ。
気付くのが遅すぎて、何も始まらないまま終ったんだ。
彼女を抱いていた日番谷の表情が、頭から離れない。
日番谷君も、あんな表情するんだ。
出来れば、見たくなかったなぁ。
「ばいばい、日番谷君。」
私は、携帯電話のメモリーから、彼の“記憶”を消した。
ボタンを一つ押すだけなのに、涙が流れてくる。
やっぱり此れは、恋だったんだね。
自転車を押しながら歩く雛森を、上り電車が追い越して行く。
彼との思い出は、携帯電話のメモリーみたいに、消すことは出来ないだろうなぁ。
こんなに大切なモノなの、そう簡単に忘れられるわけ無いじゃん。
捨てはしない、忘れはしない。
ただ、心の奥底に、閉じ込めるだけ。
もう、見えなくなった上り電車は、彼を遠くに連れて行ってしまった。
***Fin
→次ページ・おまけ