人魚姫
□4.窓の外の海岸線
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今朝は珍しく、夜明け前に目が覚めた。
どうやら昨晩は、あの歌を聞きながら眠りについたらしい。
小窓は開けっ放しで、風に吹かれてカーテンが膨らんでいた。
一晩中窓を開けて寝たせいで風邪をひいてしまったのだろうか、少し肌寒い。
冬獅郎はベットからでて、部屋着を羽織り、窓を閉めようと足をはこんだのだが、いつもと雰囲気の違う海岸線に、ふと手を止めた。
普段は霞でぼやけた視界なのだが、今日は海がはっきり見える。
波打ち際に誰かが倒れているのが見えた。
昔、自分が倒れていたあの浜に―――
The seabloard spread at the out of the window〜窓の外の海岸線〜
そこには、黒髪の少女が倒れていた。
衣服は何も身につけておらず、透き通るような白い肌が生きている人間かどうかを疑わせた。
冬獅郎は自分が羽織っていた物をその少女にかけてやった。
「おい、大丈夫か。」
声をかけ、肩を揺すると、少女は瞼を開いた。
しかし、意識が朦朧としていて視点が定まっていない。
「王子、どうなさいましたか?」
家来が声を張り上げながら、走ってきた。
「おい、一護。すぐに医者を呼べ。此処に女が倒れてた。こいつを城に連れて行く。」
「少女は私が運びましょう。」
「いや、俺がやる。」
新月の晩、自分だけが聴こえるあの唄―――
一年前に自分が倒れていた海岸線に、同じように倒れている少女―――
繋がりそうで繋がらない。
不思議な感覚が、冬獅郎の中を駆け巡った。
***4話fin