恋物語

□彼とあの子が手を繋ぐとき
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春が来た。


毎年この季節になると、私の周りのいろんな事が変化した。
クラス替えで新しい友達ができるし、部活だって新入生が入部してくる。
幼馴染みの彼だって、変わった。
彼女ができたのだ。
もしかして、なんにも変わっていないのは、自分だけかもしれない。



始業式の日、学校へと続く緩やかな坂道をのぼってゆくと、少し前に幼馴染みの後ろ姿が見えた。
隣には可愛い彼女。
二人は、手を繋いでいる。


彼女とは春休みに付き合いだしたと言っていた。
彼の家に遊びに行くと、ちょうど出掛けようとしている彼と出くわした。
いつもほったらかしの寝癖もしっかりと直していたから、どこ行くの?と聞くと、最近付き合いだした彼女とデートをすると言っていた。


初めは、凄く驚いた。
けど、すぐに納得出来た。
こんなにかっこよくて、頭だって良くて、優しい男の子。
女の子達がほっとくはずがない。


日番谷くんは凄いな。なんて思いながら、デートに出かける幼馴染みを見送って自分の家に戻ると、急に虚無感に襲われた。
ようやく彼女という存在がどうゆうものなのかを理解した。


二人はは手を繋ぐ。
日番谷君は彼女を抱きしめる。
付き合っているんだから、キスだってする。


心の中が、空っぽになった。


今まで彼の一番近くにいたのは、自分だった。
学校で出来たの女友達よりも、彼は近くにいた。
彼も自分と同じように感じていると、信じて疑わなかった。


けど、今は違う。
昔から私が転ぶと、必ず差し伸べてくれた手。
今まで私を助けてくれた手は、これからは彼女を守るために差し伸べられる。


それから、桃は幼馴染みの家に行かなくなった。
行けなくなった。



春が来た。


私は走る。
まるで足が軽いみたいに。
春が来たのが嬉しいみたいに。
前を歩く彼の肩をポンッと叩き、笑っておはようを言った。
そのまま走って、二人を追い越した。
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