恋物語
□大好きの重さ
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雛森は簡単に「好き」という言葉をよく使う。
先日だって、お饅頭を御裾分けしたという理由だけで、「吉良君はいい人なんだよ。吉良君大好き。」とかなんだとか、十番隊執務室で長々と話を聞かされた。
今更ヤキモチという事は無いだろうと思ったのだが、無意識で吉良を睨みつけていた事を、副官に指摘されたり。
今だって、俺の目の前で「乱菊サン大好き〜」とか言って松本に抱き付いてる。
松本が俺に向かって勝ち誇った顔をしたのが、少々気に食わないけど。
口癖とは言っても、俺だって大好きなんて言われれば嬉しかったりした。
けど、最近はそうでも無いようだ。
どう考えてもおかしい事なのだが、好きな女に「大好き」と言われてもうれしくない。
それどころか、イライラする。
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六月三日は、雛森の誕生日だ。
俺が人の誕生日を覚えてるのは、雛森と浮竹のオッサンぐらいか?
毎年、松本企画の“お誕生会”が、ここ十番隊執務室で、俺が仕事をしている横で、行われる。
さっきまで、女性死神協会とかなんだとかいう団体が、はっぴーばーすでいの歌を唄ってた。
数時間前には、浮竹と京楽が雛森へのプレゼントを持ってきたし・・・
五月蝿い連中が帰った後の執務室は、凄く静かだ。
資料に目を通す俺に、雛森がお茶を淹れてくれた。
先ほどから十番隊副隊長の姿は無く、変りに雛森がいる。
松本は何時ものように、どさくさに紛れて抜け出したんだろう。
何時もなら連れ戻すのだが、今日だけは、俺にとっては都合がいい。
雛森にプレゼント渡すトコなんて、死んでも松本だけには見られたくない。
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