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□ハッピーエスケープ
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うららかな春の日差しと穏やかな風が窓から入り込む応接室。
昼休みを告げるチャイムにざわめきだした廊下、そのなかをバタバタと…
だんだん、どころではない、けっこうな速さで近づいてくる足音。
真っ直ぐに応接室に向かってきたそれに、雲雀が書類から目を上げたそのとき。
ガッ!
バタン!
乱暴にドアが開けられて、そしてすぐに同じくらい乱暴に閉められた。
後に残ったのは、飛び込んできた──カバンとスポーツバッグを抱えた山本。
「…っ、はー…」
大きく息を吐き出すと、その場にへたり込む。
「…君は、何度言ったらノックでき…」
「頼むヒバリ!」
言いかけた雲雀を遮って、山本がガバッと顔を上げた。
ムッと眉を寄せた雲雀をよそに、顔の前で手を合わせて言う。
「今日だけ、かくまって!!」
「…は?」
一瞬、ぽかんとした雲雀の耳に飛び込んできたのは。
「山本くーん!!」
「待ってーっ!」
先ほどと同じく廊下を駆けて来て
「あれ?!どこ行ったの?!」
「こっち走ってったよね?」
「やまもとくーん!」
そして今度は通り過ぎていく足音と高い声。
「……」
「……」
「…サンキュ、助かった」
安心したように、山本がほっと息をついた。
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