小説2

□拍手倉庫
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寒い。
今年の秋はすっ飛ばされたのか。急激に寒くなった空気は、肌に刺すような痛みがある。同班のテンテンは震えながら寒い寒いと繰り返す。リーとガイは言わずもがな、駆けて行ってそのまま。今日はここで解散だろう

「…何でそんな平気そうな顔してんのよ。」
「いや、寒いが。」
「嘘、ぜぇったい中にカイロ貼ってるでしょ!?」

寄越しなさい!!伸びてくる手、鬼の形相。それを軽く避けさっさと距離を取る。寒さ、というより。ストレスは、人をも変えてしまうらしい

「あーもう!捕まんない!帰る!!」

何度かの不毛を繰り返した後。すっかり彼女の機嫌を損ねてしまったようで。大きく跳躍して目の前から駆けて行った。まぁ、いつものように。次にはすっかり忘れているだろう。腕を組む。やはり今日は一段と、冷える





家の中の気配に気付くのと、扉の鍵が開いている事に気付いたのは同時だった。土間にある靴を見て、唯一思い当たる人物と一致する。扉を閉め靴を脱ぐ。長くない廊下を進み。襖を開ければ温かい空気がぶわっと体に当たる。居間を覗くと、想像通りの光景がそこにあった

「シカマル。」

名を呼ぶ。
いくらなんでも、寛ぎすぎじゃあないか?そうは思ったものの…鍵を渡したのは己だったと自己完結して襖を閉め、部屋を見回す。石油ストーブがフル稼働している中、卓上にあるカセットコンロには、蓋を閉められた鍋。恐らく、ある程度は調理済みなのだろう。そして畳の上に敷かれた布団で昼寝している、呼んでも起きないシカマル…
………やはり、鍵を渡したとはいえ…寛ぎすぎでは…?

「おい、起きろ。」
「…あ…?…やっと帰ってきた…。」

くぁあぁあ。大きな欠伸。呑気な奴だ、という感想すら抱かなくなるくらいには…こいつとの時間も、長くなっていた。俺がいつまでも返事をしない事に段々居心地が悪くなってきたのか、起き上がりはしないものの…体を布団の端に寄せて、掛け布団を捲った

「温めておきました…?」
「間に合っている。」

何とも言えない表情になっているシカマルの横を通り過ぎ、机の前に座る。鍋の蓋を開けると、熱が抜けきっていなかったのか。湯気が上がり、腹を空かせる匂い。今はまだ、昼でも冷える…きっと美味しい
小声で、風呂も沸いてます…と聞こえてきた。温かい部屋、風呂、食事………なるほど

「お前の用意も出来ているって事か。」

変な音が聞こえた。気管が狭まった時の、空気の音。そちらに目をやれば、先程よりも変な表情で固まったシカマル

おかしな事を言っただろうか…?


end
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