小説2
□拍手倉庫
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「あんたでも、そういうの食うんだな。」
慣れていないのか。ネジは口元に生クリームをつけた状態で軽く目を見開いた後、直ぐ罰が悪そうな表情に変わり…じろりとこちらを睨んできた。最悪だって聞こえてきそうな顔
「何をしているんだ。」
「それはこっちが聞きてぇ。」
誰に見られるかも判らないのに…こんな真っ昼間から、食べ歩きなんて。テンテンやいの達じゃああるまいし…彼の行動にしては珍しい。見詰められ続けて居心地が悪くなったのか、クレープとか言うらしいぞ。と話しながら口元のクリームを指で拭って舐めとった
「……そういうのは外でやるなよ。」
「何を言っているんだお前は。」
誰にも見られてないな?辺りを軽く見回したが、幸い通りには人がいない。よかった、何か…色々と
「頼むから、俺がいる時にそういう事をしてくれ…。」
「………何を言っているんだお前は。」
同じ言葉を繰り返し、彼の機嫌が更に悪くなる。…しかしネジが…食べ歩き、ねぇ。しかもクレープ…脳内でイメージが結び付かない。…、………。
「自分で買え。」
「…まだ何も言ってねぇ。」
「では、何を言うつもりだったか聞こうか。」
「………それ、どこに売ってましたか…?」
ふん。鼻で笑いながら彼は歩き始める。がっくり肩を落としながら後ろを付いていく。別に…ちょっと恋人らしい…らしいって何だとも思うが…そういうのをやってみたい…て思ってもいいじゃねぇか…。何より俺には、その量の生クリーム丸々一つは無理だ
「野菜とか、そっち系を買えばいいだろ。」
「しれっと心読むな…。」
「お前の考えは読みやすい。」
そんなに判りやすいですかね…。それとも、付き合いの長さだろうか。ほら、その角だ。ネジが指差す
「この辺にクレープ屋なんてあったか。」
「さぁ?」
「さぁって…、……ッ!!」
重力が崩れる感覚。慌てて伸ばした手がネジの腕を掴む。道が、無い………違う。今まで己がいた地面が…消えた。真下は暗闇、宙ぶらりんの状態。見上げれば、片腕だけで俺の全体重を支えている筈の彼は涼しい顔をしている
「幻術…ッ。」
「そう思うなら、そうなんじゃあないか。」
表情一つ変えず。否、俺を見て少しだけ面白そうな顔。幻術だとしてもムカつく。が、何故かその怒りが力に変換されない。それ所か、指から一つ…また一つ。力が落ちてずり落ちる
「引き上げてくんねぇのな…!」
「おかしいな。幻術にすがるのか。」
「藁でも幻術でも縋りたいだろこの状況は!」
へぇ。意地の悪そうな顔。何だか久しぶりに見た気がする。懐かしさを覚える表情に気が…力が、抜ける。駄目だ、落ち………る!
「なぁ、シカマル。」
体が落ちる感覚で慌てて目を開く
視界に映る曇一つない青、瞬き。いつもの場所で眠っていたのかと。空気の冷たさに脳が冷え、頭が覚醒する
そうだ、あいつは死んだんだった
「まだ暫く、こちらには来るなよ。」