すとぉ→りぃ
□春麗ら
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「ふーん。
でなしてこんな時間に来とるん?」
どこか変わったイントネーションに戸惑いながらも
丁寧に自分のいきさつを説明した。
「大変じゃのぉー
まぁ頑張りんしゃい」
と手をヒラヒラさせ
また桜を眺めた。
そんな彼に恐る恐る聞いてみる
「あの…
貴方はここで何をしているんですか?」
私は挨拶を任されたので
分かるけれど他の生徒はもっと遅く登校するはずなのに彼だけが門の前に居る。
日差しは暖かいが風が
吹けばまだ冷たい。
そんな日に好き好んで
外でうたた寝を楽しんでいるなんて普通に考えられない。
「人ゴミが嫌いなんじゃ」
「…。」
「だから早よー来たけぇ
したらこの桜が綺麗でのぉ♪
見とれとったら
お前さんがおった。」
どう考えても寝ていたにしか見えなかったが
確かに綺麗な桜なので
その気持ちは分かる。
「いつまでそこに居る
おつもりですか?」
「いつまでじゃろうなー…?」
逆に問いかけられた。
ハッと気付き腕時計に
目をやると
時刻は刻々と迫っている。
「私は遅れると
いけないのでそれでは」と告げ
校内に足を踏み入れた
その時
「待ちんしゃい!」
先程別れを告げた彼に
呼び止められ振り向くと
彼は無邪気な笑顔で
「桜より良いもん見つけたぜよ」
と言い腕を掴み走りだした。
ゆらり ら ゆらら
「お前さんの名前は?」
薄紅色がゆらら踊る
「…柳生比呂士です」
「俺は仁王雅治じゃ」
「よろしく」
「こちらこそ」
そっと微笑み返して
薄紅色のアーチを潜り抜け
春麗らに光りが注した。
ゆらり ら ゆらら
そんな穏やかな春の日
君と出会いました。
END