並盛を仕切っているのは、風紀委員長でもある雲雀恭弥。
それは中学だけでなく、今や町内全域を手中に治めていると言っても、過言ではない。
群れるのを、そして馴れ合う事を嫌う、孤高の存在である雲雀。
それは他人に対しても同じで、雲雀に目撃された群れている者達は、忽ち仕込みトンファーの餌食となってしまう。
そんな雲雀の周りには、当然の事ながら気軽に人が寄って来る筈もなく、いる者といえば、風紀委員の面々ばかり。

しかし、一人だけ気軽に声を掛け、何かと寄り付いて来ている者がいる。
一年生の頃から野球部のルーキーとして知られており、校内でも人気者の、山本武だ。
彼の朗らかな性格がそうさせているのか、強さの本質を認められているからなのか、雲雀も山本にだけは敵意を示さない。
これは並盛七不思議の一つとなっていた。


「よう雲雀、どうした?」
山本が携帯を耳に当てている。相手は雲雀の様だ。
現在、日はすっかり落ち、山本も部活を終えて学校を後にしている。
しかし、此処は山本の自宅ではない。山本の和室の部屋とは違い、洋風の部屋。
その部屋のベッドの上で仰向けに寝そべっている。
そしてその上には、銀色の髪を揺らしている少年がいる。
此処は、獄寺の家だった。

「まだ学校にいんのか?ホント、学校が好きなのな、雲雀は」
いつもと変わらぬ朗らかな口調で話す山本。
しかし今、この部屋の光景は、そんな爽朗な場面ではない。
一見、山本は電話をしながらただベッドに横になっているだけの様だが、ズボンのチャックは下げられている。
その上に跨っている獄寺の方は、身に付けている衣服はシャツ一枚のみで、下半身は露になっている。
その獄寺は、山本の方をチラリと一瞥しながらも、懸命に躯を上下に動かしている。
ギシギシというスプリングの音が響き、それに合わせる様に獄寺の荒い息遣いが聞こえている。
そしてこの部屋には、青臭さが充満していた。
「ん?資料を倉庫に?あぁ良いぜ、今から行く。じゃあな」
電話の内容は、整理した資料を倉庫へ保管する為の荷物持ちをして欲しいとの事。
風紀の者達がいればその者に頼むのだろうが、もうこの時間では誰も残ってはいない。
そこで白羽の矢が立ったのが、山本だった。

「つー訳で、俺行くわ。こっちも終わらせねーとな」
「ッ…クッ…んっ、アッ」
携帯を切った山本は自分の上に跨っていた獄寺の腰を掴み、早急に上下に揺さ振りを掛けた。
自分の動きより早い山本の動きに付いて行けず、獄寺は堪らずに声を上げて内壁を締める。
「イキそ。獄寺も自分の弄れよ」
「ンッ…ふ、ぁ…アァッ」
言われた通り、獄寺は自分の性器を扱き上げ、込み上げる射精感に従い、自分の手中に白濁を吐き出す。
獄寺の体内では山本が弾け、二人はハァハァと荒い息を残した。
ズルリと抜かれた、山本の性器。
ゴムの中には、白い液体が詰まっている。
山本はそれを剥がすとゴミ箱へと投げ入れ、自身に残った液をティッシュで拭うと慣れた様子で浴室へと向かった。

山本がシャワーを浴びている間に、獄寺もティッシュで自分の精液を拭き取り、洗面所で手を洗うと身なりを整える。
本当ならば、自分もシャワーを浴びてから服を着たい。
手で押さえていたとはいえ、指の間から飛び出た精液は肌に付着しており、汗も掻いている為、ベタベタして気持ちが悪い。

山本が出た後にシャワーを浴びても良いのだが、その間に山本は獄寺の家を後にしてしまう。
獄寺がシャワーを終えるのを待たずに。
それが嫌で、獄寺は我慢して一旦服を着て、山本が帰るのを見届けてからゆっくり入る事にしている。
先刻まで肌を合わせていた相手が、いつの間にか帰ってしまうのは、やはり寂しい。
そんな事を言っても仕方が無いのだが、取り残された様で、物悲しくなる。
しかし、獄寺にそれを主張する権利は無い。

浴室から、陽気な鼻歌が聞こえて来る。
恐らく、雲雀から声が掛かり、喜んでいるのだろう。
これから雲雀に会えると思い、浮かれているのだろう。
そんな様子が手に取る様に判り、獄寺は深い溜息を吐いた。
不毛だ、と思う。
思ってはいるが、解決策が見出せない。
「風呂、ありがとな」
そう言いながら出て来た山本は、とても爽やかで。
とても先刻まで淫らな行為をいていたとは思えない程。
もう頭が切り替わっているのだろう。
「じゃあな」
「あぁ」
短い挨拶を交わす。
しかし、それだけでも、獄寺は満足なのだ。
たとえ、玄関で振り返らなくても。
その背中を見送れるだけで、獄寺は幸せだと思っている。

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