第二章

□あじあん・クラスト31
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あの後俺は気絶していたらしい。


起きたら草むらの中にいた。



「目が覚めましたか?」



朱雀は焚き火を起こして座っていた。



「…ここ……」

「あの町の近くの草原ですよ。町は一晩で全て焼き払われてしまいました。…酷いもんです」



焼き払われた?
ファイと晃司はどうしたんだろう…。


「…あれ、白虎は?」


先ほどから白虎の姿が見えない。


「白虎ならご飯を狩りに行きました。」

「ああ、そう…。」




「………………。」

「………………。」




その後話すこともなくてただ火のパチパチ弾ける音を聞いていた。

すると朱雀は立ち上がり俺の前にしゃがんだ。

彼の赤い目が目の前にある。



「あの人たちのことを考えていたんですか?」



あの人たちって…ファイと晃司のことか?



「あの人たちは真治さんの何ですか?」

「何って……友達…?」



ファイは友達なのかよくわからないけど。



「じゃあ何で真治さんそんなにつらそうな顔をしているんですか……。」

「え?そう?…寒いからじゃないかなぁ」



別に身体もすっきりしてるしつらくないけど…少し肌寒かったので無意識に顔をごしごし擦った。



そんな俺を見て朱雀は自分の剣を俺に持たせた。
そこからボゥ…と暖かいものが流れてくる。



「…………暖かい」

「エネルギーを送りこんでいますから。
…僕も寒いです。くっついていいですか?」



そう言うと剣を挟んで俺を抱き締めてきた。
何だよ危ないなぁ…。
でも剣からはまだ暖かいものが流れこんでいる。
それが心地良かった。



「真治さん、疲れているんですね。今日は休んで明日から出発しましょう」

「何もそこまでしなくても…。」



そうは言ったものの暖かくなったせいか身体がダルくなってきていた。



「駄目です、寝てください。
……何もかも忘れて、次に起きた時は元気な真治さんでいて下さいね。」



…朱雀は何を言っているんだ?





「お休みなさい、真治さん」


目の前を手で覆われて視界が真っ暗になった。
声もどこか遠くから聞こえてくる感じだった。



意識がぼんやりとしてきて…俺はまた眠った。




ーーーーーーーー




「ったく、何時間寝てんだよ!」

「う〜ん…頭痛い……。」

「大丈夫ですか?」



白虎が文句を言い、朱雀が気遣ってくる。



「お、俺だって心配してらぁ!」

「…やはり何も残っていませんね。」



白虎のセリフを無視して朱雀は町の焼け跡を調べた。



「もういいだろこんな町。何でわざわざ戻ってくるんだよ!」

「怪我人がいたら大変じゃないですか。…生存者はいないみたいですけど……。」



俺は頭を押さえてファイと晃司を探したがどこにもその姿は見当たらなかった。


いやに身体が熱い…と思って左上の『暴走の日』のステータスを見てみると、やはり目盛がなくなっていた。



うわ、ヤバイな…。血を見ないようにしないと……。



俺の心配をよそにその後、町を出てルドルグに向かう旅の途中も暴走することはなかった。





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