銀の戯曲

□第一章夢(第一章・第二章編)
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プロローグ

 夢。一言で言ってしまったら、それはただの記憶の整理である。
記憶が大量に入り、感情が伴うと、記憶が夜のうちに整理を始める。
その時に見る映像を人は「夢」と判断する。
 しかし、妖怪にとって夢と言うのは人間とは違う。妖怪は夢を見ない、強い感情を伴うこともあるが、大半のものが夢を見ない。
もし、妖怪が夢を見るとき、それは何かの予感を示すものである。


がっシャン、がっシャン、鎖の音が聞こえてくる。
布団の上で寝転びながら、ボーっと天井を見ている。
外を見なくてもわかる。新入りが入ってきたのだ。かわいそうに、ここからは永遠に出ることは叶わなくなった。冤罪であれ何であれ、罪を犯したのだから、その身が朽ちるまで出ることはできない。
ここは妖怪たちにとっては永遠の牢獄ー玄署。
罪を犯した者たちはここで永遠の刑に服すことになる。
ここに服して何年・・・いや、そんなかわいらしい年数ではないな。
布団の上で苦笑いを浮かべる。
自分が犯した罪なんて、簡単なものだった。
人間の夢を妖怪たちに移したり、妖怪の夢を人間に移しておかしくしたりしただけ。

「嘘を仰いな。わて今吹き出しそうになってしもた。」

いきなり、自分しかいない空間に声がする。
布団から起き上がり、声のした空間へ目を凝らすと、藍色の着物を着た男が立っていた。

「枕返しのー。あんさんの罪は本来、そんな優しいものじゃありまへんやろ。
あんさんは人間の命をむやみやたらと奪ったり、人間の夢を改ざんして、おかしくさせた張本人やないですか。
もう何百年も前から、ここへ閉じ込められている古株やないですか。」
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