紅い

□告白
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私は、いつか救われることを信じているのです。
涙は、心を濁すためのものじゃなく、心を洗うためのものでした。
涙ですっきりきれいになった私の心は、遠くまで音を運べるようになりました。
「もうだめだ」「やめてくれ」
私は頭にうったえるのでした。
その言葉は、私の心に遠く遠く響きわたるのでした。
『大好きなんだね』
2人の私は言いました。
「そうなんだよ」「そうなんだよ」
2人の私は口々に言いながら私の心を覗き込むのです。
真っ黒い穴がぽっかり。どこまでもどこまでものびていく。その洞窟は、私の目から流れ、心にしみこんだ涙の通り道だったのでした。
「おーい」「おーい」
「助けてくれー」「助けてくれー」
私の心の深く深くに落ちてしまった2人の私は言いました。
でも、私には2人の私を助ける力がそなわっていなかったのです。
「私は私が大好きなのよ」「私も私が大好きなのよ」
私は私は私は私は・・・
私は2人の私を助けてやりました。
2人の私はポロポロと涙をこぼすのでした。
そしてまた私の洞窟はきれいになっていくのです。
2人の私の涙は、洞窟で交わるとキラキラしたシャボン玉になりました。
ポンポンポンポン
そのシャボン玉は、私が息を吹きかけてやると、ポヨンポヨンとはずんで壁に当たって割れました。
そしてまた涙に戻りました。
洞窟にできたプールで2人の私は泳ぎ始めました。
「もう大丈夫なのよ」「もう自分で戻れるのよ」
大きなプールはどんどん浅くなっていきました。
涙は、私の心を洗い流すと、さっさとどこかへ行ってしまいました。
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