もじ
□春先
1ページ/1ページ
空が光る。
激しい雨の中、爆音と共に。
「うおォオっ!オイィィィ!!ビビらせんじゃねーぞコルァ!!あ…いやビビってねーよ。雷如きでこの白夜叉と呼ばれた男がビビりますかってんだコノヤロー」
眠らない町かぶき町の自宅で一人過ごしていた銀時は、怨みがましく窓を見つめる。
開いてもいない格子状の窓は強風でガタガタと揺れていた。
今夜に限って神楽はお妙の所に「女の子同士のお泊まり会に憧れてたアル!」と意気揚々と遊びにいき、一人の夜を過ごしていた。
「いやいやいや、あんなガキ居ないからなんだってんだ。俺ァ元々独りさ。一匹狼。何人たりとも俺の心は癒せやしねェ。アレこの台詞ちょっとカッコ良くね?って俺独り言うるさっ!」
自分では解っている。
そう、雷がこゎ…
「待てェェ!誰が怖いなんて言うかァァァァ!!って言っちまった!言っちまったよコンチクショー!!」
一人虚しく叫んだ直後、
ピンポーン
と、ドアホンが鳴った。
我に返った銀時は一つ咳払いをして玄関に向う。
「よォ…」
扉を開ければ同じ背丈の男。
己とは真逆の黒くサラサラの髪をしたその男は仕事終わりなのか、仕事着のままそこに立っていた。
「土方…」
とてつもなくホッとした。
人が来た事、それが好いた人物である事。
「…上がれよ」
この男はいつも突然にやってくる。
銀時が居ようが居まいが、気が向いたと言って。
銀時はそれが嬉しかった。
そして土方が玄関に足を上げたと同時に、また一つ近くに落ちたのではと感じる程の雷が鳴った。
「「ぅおォッ!!」」
男二人の叫び声。
「「………」」
暫し沈黙。
「なーに?十四郎くんったら恐いの〜?」
「バカ言ってんじゃねェ。誰が雷如き恐がるか。ちょっとアレ…ノリ?そんな気分?つーかテメーこそ大仰に叫びやがって…恐ーんだろ?」
「ハッ。俺だってノリだね。お立ち台にだって乗っちゃうね」
お互い似た者同士、見栄っ張りなのは解ってる。
つっこむ相手が誰も居ない今二人で言い合うのは無意味だと悟った。
居間まで行くとふいに後ろに影が刺さり背中に温もりを感じた。
「バカおめェ濡れてんじゃねーか」
「いいんだよ。どうせ脱ぐ。だからテメーも脱げよ」
大雨の中での傘は無意味だったのか、隊服は全体的に湿っていた。
顎が掴まれたかと思うと唇が重なる。
それからはあの…予想通りなんで、想像して下さい。
「ぐあ…朝だ…」
昨晩とは一転して天晴れな空であろう太陽の日差しに目を細めながら体を起こす。
隣で寝たはずの土方の姿はもうない。
銀時は寂しさを覚えながら、ダメなおっさんらしく再度眠りについた。
今度はいきなり真選組屯所に遊びに行き驚かしてやると心に決めて。
終わり
とりあえず慣らしで。
謎なとこも多々あろうかと。
いつか書き直します。
いや、直さないかも。
20070407