もじ
□GAME 【★】
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先生は、大人だけど、ガキっぽくてオッサンっぽくて。
惚れた弱みか、そんなあんたに俺はいつも翻弄されます。
でもあんたはきっと無意識なんだ。
大人だと思っていて、ガキでオッサンだと自覚してるくせに、無意識で俺を惑わせる。
「多ー串くんっ」
「…土方です、坂田銀八先生」
帰り際の昇降口、高校生という若さ故か一時も忘れはしない恋人、その男に引き止められる。
もう何度もやりとりする俺と先生の始めの挨拶。みたいなもの。
わざとフルネームで呼び返してやる。
「あのさぁ…」
ってシカトかよ!
つか何だよ、何か言いたげに遠慮して顎を引くから上目遣いになってんじゃねーか。襲うぞコノヤロー。
「何ですか?」
まるで気にはしてないといった具合に、スニーカーに履き替えながら続きを促す。
「今日うちに来ない?」
「っ!」
思いもよらぬ台詞に、驚いて鞄を落としそうになり、ずり落ちたそれを脇に正しながら見上げた。
「泊まりとかどうかなって思ったんだけど…用事あった?」
ととと泊まり!?
中腰から折角姿勢を戻したのに、今度は本当に鞄を落としてしまう。
ドサッという音が、やけに遠くに聞こえた。
若い俺は、その意図する所を想像して、卒倒しそうな感覚に陥る。