□キリリクetc

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「オフィシャルのエースネットバトラーの伊集院炎山が、しがないオフィシャルの俺に協力してくれって?」

 全てを寄せず、ヒトリ、で。

「俺の手を借りなくてもエースネットバトラー、なら大丈夫だろう?以前俺を邪魔者扱いしたくらいだ」

 何者にも左右されず。任務を遂行するために必要なもの以外は削除して。
 受け付けず遮断して、反射を繰り返して、そして、残ったものはあるのだろうか。

「最悪だ」
『炎山さま…』

 伊集院炎山はオフィシャルセンターの一角でうなだれていた。正確には、自己嫌悪だが。
 今まで他人を寄せ付けず関わりを避けてきた代償が、これか。自嘲気味に笑って炎山は壁を叩きつけた。

「任務と私情は別だ…。それも解らないとは愚かだな」

 そうは言うものの、自分の今までの行いに非が無いわけではないので余計に苛々が募る。

『…炎山さま、別の方向から探りますか?』
「ああ。奴が持っているPコードが使えないとなると少し厄介だがな」

 オフィシャル権限で無理やりセキュリティを解除する、と付け加えて炎山は手早くプログラムを組み立てていく。
 本当は最初からこうすることもできた。恐らく昔の自分だったらこうしていただろう。他人と交渉する時間がもったいない、と。
 けれど炎山は変わった。しかしだからと言って周りが変わるかと言ったらそれはまた別の問題だ。

「何してんの?」

 声と同時に左肩に重みが加わった。炎山が視線を向けると、そこには澄んだ茶色い瞳。

「光…任務中だ。貴様と違」
「ざーんねん!オレも任務中、でしたー」

 にぃ、と笑う熱斗はいたずらっ子の表情だ。炎山はふぅ、とため息を吐くと熱斗の頭をくしゃくしゃと撫でた。

「ならさっさと終わらせてこい」

 炎山がそう言うと熱斗は、肩に乗せていた顎を引き上げ、えっへん、と言うかのように両の手を腰にあてた。とても自慢気だ。

「それがもう完了みたいな?あとは依頼主に届けるだけなんだけど…いないんだよなぁ」
「そうか…」
「でもオフィシャルって炎山みたいにしっかりしてる人ばっかりじゃないんだな」
「む?」
「すごい慌ててたみたいだから急いでPコード探してきたってのに」
「…Pコード?」
『こら熱斗くん!依頼の内容を他の人に話しちゃダメだよ!んもぅ、行くよっ』

 ロックマンがそう熱斗を叱りちゃっかり炎山と距離を取らせようとする。熱斗はもうちょっと炎山と居たいのか渋っていたが、ロックマンの説教に折れた。
 じゃあな、炎山。と言って去って行こうとする熱斗。
 オフィシャル、Pコード。まさか、と炎山は思惟する。
 先程の彼の様子は額に汗を浮かべ捲し立てるようにして炎山を追い返した。それは炎山に対する怒りからだと思っていたが、まさか、ひょっとすると。

「光!」
「うぉっ!?えっ、炎山!ここっ、オフィシャルセンター!!」
「…あぁ、すまない」

 後ろから抱き締めてしまった熱斗の体をパッと離す。自分でも引き止める方法はもっと他にあるだろう、とは思う。
 でも、抱き締めたかった。
 拒絶されても、逃げられないように。
 熱斗ならそんなことはしないとわかっていたのだが、今、離れてほしくなかった。

「どうしたんだよ炎山?」
「…今日、任務が終わったらまた会おう」
「?おっ、おう…」

 熱斗なりに何かあったんだなと感じ取り、突然の誘いに訝しみながらも頷いた。その反応に炎山は小さく口角をあげる。

「光。早く任務を終わらせるためにもPコードを見せてくれないか?」
「えっ?いや…それって…」

 プライバシー、とか、と口籠もる熱斗に炎山はオフィシャル権限だ、と言い放つ。それなら仕方ないな、と言いつつもやはり後ろめたさからか、熱斗はこっそりと言った感じでPコードを見せた。
 Pコードを確認した炎山は顔を手で半分覆うとため息を吐いた。その様子に少なからず熱斗が不機嫌になる。

「なんだよ。見せてやったのにため息かよ」
「そうむくれるな。だが、貴様のおかげで早く任務が終わりそうだ」
「どういうことだよ?」

 意味がわからない、と眉をぎゅっと寄せる熱斗と、全てわかったと微笑う炎山。
 蒼い瞳を後方へ向けると、サッと人影が柱に隠れた。まったく、と思いながら炎山はその人影の名前を呼ぶ。
 その名前と、何より出てきた人物に熱斗は驚いた。

「依頼人のオフィシャルの人っ!」
「うっ…」

 ばつが悪そうに出て来たオフィシャルの男性は一つ息を吐き出すと頭を下げて謝罪の言葉を延べた。

「実はPコード無くしちまって、ばれたらまずいと思ってあんな事言ったんだ。まぁ、昔確かに悔しい思いはしたがな」
「そうか…。それで、Pコードは?」

 オフィシャルの男性は熱斗からPコードを受け取ると、それを炎山へと送った。炎山はPETにPコードがあるのを確認すると、ありがとうと、もう一つ言葉を添えた。

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