□キリリクetc

大切な名前
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「んまー!」

注文したマンゴーパフェを頬張った熱斗の第一声に炎山はブラックコーヒーを飲みながら微笑んだ。

「炎山これうまー!」
「…わかったから。他の客の迷惑になるから少し静かにしろ」

ここは最近話題になっているマリンハーバーにあるお洒落な外装となかなか美味しい軽食で人気を呼んでいる喫茶店である。
熱斗と炎山は自分達のナビであるロックマンとブルースの検査及びメンテナンスの為に祐一郎の所へ訪れたのだが、メンテナンスが意外と時間がかかるようでメンテナンスが終わるまでの待ち時間が炎山はともかく熱斗は暇で仕方がなかった。
そこで時間を持て余しているし、せっかくマリンハーバーに来たのだから今話題の喫茶店に行ってみようと言うことになり二人は喫茶店に来ていた。

「はぐっ。…んー…マンゴーとマンゴーソースのかかったバニラアイスとの相性が絶妙に絡み合って…」

瞳をきらきらと輝かせ、うっとりとそう言う熱斗に炎山はクスッと笑う。

「本当に光はマンゴーが好きなんだな」
「もち!カレーとチャーハンと味付け海苔と同じくらい好き!」

にっこりと曇りのない笑顔でそう言うと熱斗は、ぱくんっ、とマンゴーパフェを頬張った。

「…光」
「んぅ?何?」
「頬にクリームが付いているぞ」
「え?どこー?」
「まったく…」

炎山はペーパーを一枚取ると熱斗の頬に付いているクリームを拭った。

「ん…ありがとう炎山」
「いや…。光、お前はいつもそうなのか?」
「何が?」
「その…食べ物を頬に付いたまま…っ何でもない。気にしないでくれ」
「…うん?」

はむっ、とパフェを食べる熱斗を見ながら炎山はコーヒーに口をつけた。

「…ねぇ炎山」
「何だ」

熱斗はスプーンを動かすのを止めて炎山をじっと見る。

「どうした光?」
「…それ、止めてっ」
「む?」
「だーかーらっ!光じゃオレなのかパパなのかママなのかわからないって!」
「…は?」
「っだから名前で呼んで!熱斗、って!」

顔を真っ赤にさせてそう言う熱斗が可愛いなと思いながらも炎山はどうしていいのか解らずソーサーからコーヒーを少し持ち上げたまま固まっている。

「っ炎山…もしかして…オレのこと本当は嫌い…」
「そんなわけないだろう!ただ…その…急に言われても…」
「炎山のバカっ!」
「仕方ないだろう」
「もういいっ!でも…いつか絶対、熱斗って呼んでよ!」
「…わかった。約束しよう」

熱斗は自棄になって残っているマンゴーパフェを全部口に詰め込んだ。
それを見て炎山は残っていたコーヒーを全て飲み干した。

「それじゃあ出るか。そろそろメンテナンスも終わるだろう」
「そうだな!ロックマン大丈夫かな…あ」

伝票を取ろうとした熱斗の手より早く炎山の手が伝票を捕らえた。

「炎山?」
「オレが払う」
「いいよ!オレだって自分の分くらい払え──わわっ!」

炎山は熱斗の頭をくしゃくしゃと撫でると、フッ、と笑った。

「こう言う時は大人しく奢られろ」
「でも…」
「デート代位オレに払わせろ」
「でっ!?」

かぁっ!と顔を真っ赤にさせて固まる熱斗を見て炎山はクスッと笑うとさっさとお会計を済ませてしまった。

「うぅ…ごちそうさまです」

お店から出てぺこんと頭を下げる熱斗。

「構わない。気にするな」
「ありがと、う…うー…」

そわそわしながら炎山を見る熱斗。

「どうした?」
「炎山…トイレっ!」
「…行ってこい」

炎山はため息をつきながら再び先程の喫茶店に入っていく熱斗の背中を見送った。
でも。
もし、あの時。
オレも一緒に行っていたら。
まだ、守れただろうか?

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