□キリリクetc
□愛しい者のために命をかケロ!
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「くっ!させるか!」
「わぁあぁっ!」
「負けられ、ないのに…っ」
「貰った…!!」
「あまりボクを怒らせないでよねっ」
この仁義無き姑息かつ卑怯な戦いは、一通の封書から始まった。
緑色の可愛らしいカエルが印刷された封書に送り主の名は無い。無いが、誰が送ってきたのか見当はつく。もしかしなくてもDNNの人気アナウンサー、緑川ケロからだろう。
彼女から送られてきた封書には、一枚のDVDと、日時と場所だけが書かれているシンプルな紙が封入されていた。これだけではまったく意味がわからないが、DVDを見てみるとすぐに伝えようとする意図がわかった。
DVDの内容は、DNNが極秘入手!N1グランプリで活躍した光熱斗選手のあーんなところやこーんなところまで撮影しちゃいましたっ!!と言うケロのアナウンスから始まり、いつどうやって撮ったのかはわからないが、熱斗の日常生活、学校から始まり自室などのプライベートゾーンまで収録されているという代物だった。
ここまで聞けば、熱斗愛!隙あらば常日頃彼を狙っている“光熱斗は愛しの自分の嫁。同盟“に加盟しているメンバーが狂喜乱舞しそうであるのだが、実際はそんなにおいしいわけがなく、あともうちょっと!ああいいところ!で、熱斗の映像は終わり、完全版が欲しい人は紙に書かれた日にその場所まできてね!と言う、大きな、確実に釣られるエサだったのだ。
「本日の議題、ねっとたんはオレの嫁!act.32を変更して、急遽、先日届いたこの封書について話し合おうと思う。異存は無いな?」
そのエサ、に思いっきり釣られた“光熱斗は愛しの自分の嫁。同盟“に加盟しているメンバーは、本日の定例会議に何かしらの方法で集まっていた。
本日のまとめ役である、熱斗はオレの嫁。が代名詞の伊集院炎山がみんなにそう問いかけると、皆一様に頷いた。実際、ケロが撒いたこのエサがすごく気になっているのだ。否、全員がすでに釣られている。
「この封書に入っていたDVDをロールに解析させてみましたが、並じゃないプロテクトがかかっていたので複製はできないと思います」
熱斗は嫁、私も嫁。が代名詞の桜井メイルがみんなに向けてそう事実を淡々と告げた。その事実にぴくり、とメイルを除いたメンバーの眉が動く。
複製ができない、と言うことは、つまり、未完成品と言えどあの愛らしい熱斗が収められているDVDは一人しか手に入れられないと言うことだ。あくまでも自分のものにしたい。みんなで、とか、この同盟で共有しようと言う考えは無いようだ。
『ではまず、それを取り合うか?』
熱斗はオレの妻。が代名詞のライカがシャーロから通信してそう発言した。その一言に、皆の目つきが鋭くなる。静まり返るIPCの会議室兼本日の同盟の定例会議場。ビリビリと肌が緊迫とした空気により痺れる。そんな中で、男の子にしては少し高めの声が落ち着いた調子で喋った。
『ボクに良い考えがあるよ』
「何…っ?それは本当か?」
熱斗くんはボクのもの。が代名詞のロックマン.EXEはにっこりと笑って頷いた。その自信がどこからくるのかわからないが、その自信に満ち溢れた表情は周囲に落ち着きと希望を持たせた。
『そこまで自信があるのなら、ロックマンに任せてみようじゃないか』
「そうね。私はどうすればいいのか思いつかないし」
「…どんな策を思いついたんだ?」
ライカ、メイル、炎山が希望と期待にわくわくしている様子を見て、ロックマンはくすりと笑う。
『じゃあまず、そのDVDをテーブルの真ん中に…そう、そこの蛍光灯の下にくるように置いて』
「ここか?」
『もうちょっと右…。うん、ありがとう』
ロックマンの指示に従ってDVDを置いてみたが、これからどうしようと言うのか。みんなが息を詰め、固唾を飲む中、ゆっくりと次の指示が出された。
『ブルース!今だよ!』
『言われなくてもわかっている』
オペレーターである炎山に無理やり参加させられたのだが、実はこっそり熱斗のことが好きで、光はオレの癒やし。が密かに代名詞なブルースがソードで何かを斬りつけた。それに少し遅れて、現実世界はバチン!!と言う爆音と、凄まじい光に包まれた。
「何?なんなのっ?」
『何が起こっている!?』
「くっ…!ロックマン、貴様何をしたっ!」
苛立ちを含む声音で炎山に叫ばれるが、ロックマンはおもしろそうにくすくすと笑った。その表情は満面の笑みだ。