七夢

□リトルハート 〜一瞬の恋〜
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【リトルハート 〜一瞬の恋〜】



今日もキミに会えた。いつもおっきなリボンを髪につけている。キミのトレードマークかな。目印になっていい。


キミはきっとまだ何も知らないんだよね。僕がキミに一目惚れしたこと。朝、駅のホームでキミを見つけたんだよ。それから毎日、キミの顔を見るのが密かな楽しみで、友達と話して笑顔のキミは最高なんだ。その笑顔見れたら、僕は1日を頑張れるんだよ。



そうして、半年。僕はいまだにその娘に話しかけることができずにいた。毎日、彼女を目で追い、できるだけ近くにいようとした。だけど、話しかけることができない。あいさつをしてみたところで、なんて言えば、なんて続ければいいのかわからない。そんな臆病な自分に腹がたつ。



ある日、彼女の近くにいると、たまたま彼女がひらりとハンカチを落とした。
“チャンス!”
と思った僕はサッと拾い上げ、ホコリを払い
「あの…ハンカチ落としましたよ」
と声をかけた。
彼女は振り向き
「あ、すみません。ありがとうございます」
と頭を下げた。
“やった!彼女と話が出来た!”
そう思い舞い上がった。



3日後、彼女が駅で1人でいるのを見つけ
「あの…いつもの女の子の友達はいないみたいだけど、今日どうしたの?」
と声をかけてみた。
「あ…あなたはこの間の…友達は風邪で寝こんじゃってるみたいで…」
“友達がいない今がチャンスだ!”
と思い、思い切って想いを打ち明けてみた。
「あの…急にこんなことなんなんだけど……半年以上前からキミが好きで、笑顔から勇気もらってました。好きです。でも、キミのこと全然知らないから友達になりたいです」
彼女は戸惑った顔をして、しばらくして
「私にはお付き合いさせていただいている方がいるので、そのようなことはおことわりさせていただきます。すみません。」
と答えた。
とっさに僕は
「せめて、せめて名前だけでも教えてください。」
と言っていた。
「しょうこと言います。」
「しょうこ…さん…いい名前ですね。」
「ありがとうございます。」
それだけ言うと彼女は去って行った。僕は涙も出ず、ただぼうぜんと立っていた。



ショックからか、なかなか食事も喉を通らず、しばらく学校を休んだ。家にいた時にはさんざん涙を流した。死にたくもなった。なぜ僕じゃないのか…考えても仕方ないが、マイナス思考になる。
久々に来た駅………前のように友達の中で笑っているしょうこちゃんを見つけた。ぐっと胸が苦しくなった。彼女を避けるわけではないが、自分がこれ以上苦しまないように離れていた。そんな日が続いた。



4月………駅にしょうこちゃんの姿がなくなった。学校を卒業したのかなと思った。今思えば、小さな恋だったけど、短い恋だったけど、僕は僕なりに精一杯、一生懸命だった。

春風が吹いて、そんな昔の懐かしさをただよわせていた。



(2010年2月23日完成)
 

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