11周年&日番谷誕生祭
□唇から伝染する
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泣き叫ぶ声と藍色の瞳いっぱいに涙を浮かべた彼女の顔が脳裏から焼き付いて離れない。刀を握った左手は真っ赤に染まり、羽織と死覇装にはところどころ血が付いていた。
感情を押し殺していた彼女が感情を露わにしていた姿。
「隊長。どうしたんですか、ボーッとして。らしくないですよ」
「別に」
「……千鶴のことですよね?」
時々、この副官は核心をついてくる。決まって行っていた彼女のところ。あの戦いから足が遠のいていた。完全催眠化とはいえ、雛森を貫き、さらに彼女に雛森を頼み、怒りに任せて…あのあと彼女の的確な指示で皆が治療を受けることができた。何よりも彼女との力の差を思い知ることになった。おそらく今まで遠慮していたのだろう。そう思うと自分が情けなくて仕方がなかった。
「千鶴は千鶴で隊長は隊長でしょう?そのことはあの子が一番理解していますよ。それに千鶴は優しすぎるところと精神的に脆いところがあるって隊長、言ったじゃないですか。こういう時こそ、支えてあげるべきじゃないですか」
優しすぎるところがある。それが彼女の長所でもあり短所でもある。無理に聞き出せば答えるが今はそんな手荒なことはしたくなかった。それをやれば彼女は余計に傷つく。傷ついても決して弱さを見せることなく、いつも通りに接するだろう。
「話すことだけじゃないんですよ。そばにいることだけでもいいんです。ずっと一緒にいたのならわかるはずでしょう。しばらくすれば、千鶴はまた現世や虚圏に行かされますよ」
「その話どこで聞いた?」
「この前、涅隊長と話してるところを盗み聞きしました」
自分が知らない話がこうどうして出てくるのだろう。松本を見ると余計なことを言っちゃったわと一言。今回は逆にありがたい。ギリギリになれば、話したかもしれねえが。問い詰めようと霊圧を探っても彼女は霊圧感知のスペシャリストでその上、常に抑えて生活をしている。
「松本。飛来と深山呼んでこい。あと躍咲も。千鶴を探すよりも3人に聞いた方が早え。なんでいつも肝心なことを」
信頼されてないのではないかと不安になる。以前、それを言ったらそうではないと即答され、信頼してるからこそだと。心配をかけさせたくないというのもあるかもしれない。最近というよりも叛逆前からこういうことが多くなった。考えを巡らせていたら3人がやってきた。飛来と深山は呼び出されたことがわかったらしく、視線を合わせようとしない。躍咲に至っては面倒臭さそうにしていた。
「突然、呼び出してなに?こっちは忙しいんだけど」
「お前、俺を隊長だと思ってねえだろ」
「まあまあ。珠貴ちゃん、日番谷くん落ち着いて」
「日番谷隊長だ!」
同期の2人は間違えなく隊長だと思ってねえ。毎回のことだと諦めてしまうのも手であるが、それもなんか…
「千鶴のことでしょう?本人に直接聞けばいいじゃない。霊圧を補足できればの話だけど」
躍咲の言葉にかなりカチンと来るが事実なので否定はできない。霊圧を図られるのは好きではないと彼女が言っていたことを思い出す。涅でさえ、正確な霊圧を図られないと嘆いていた。
「隊長なら今、地下修練場ですよ」
「地下修練場?」
「先日、隊長が改造して作ったんですよ」
改造できるほどの能力があることは知っていたが、数日でできるものなのか疑問に思う。
「隊長と直接話した方が早いっすよ。居場所もいいましたし、あとは自力でお願いします」
深山を見ると私は何もありませんと言う顔を珍しくしていた。間違えなく一番こいつが厄介だ。絶対に口を割らねえ。
「あのね、この機会だから言うけど。日番谷くんも千鶴ちゃんに頼っていいと思うの。先の戦いで千鶴ちゃんとの差があったのもわかるけど…ずっと千鶴ちゃんは気にしてた。その辺は2人で話して解決してね。申し訳ないけど、私達は帰るね。あまり無理に聞き出したりしちゃダメだからね?」
そういうと2人を連れて扉に向かって歩き出す。深山のいう通りかもしれない。そう思ったら自然と千鶴の霊圧を探す。日頃からかなり抑えているため見つけるのは難しい。時間がかかろうが今日は色々と話そうと決めた。地下の修練場と飛来はいうが、十四には他の隊と違い、いくつもあり、隊士の系統に合わせて作られている。
「あ!日番谷隊長。うちの隊長がぶっ倒れる前に見つけてくださいね。俺達と斬魄刀が言っても聞かないので」
「……」
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