11周年&日番谷誕生祭

□約束
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私はあなたをよく突き離し、本心だけではなく感情さえも隠す。その度に手を差し伸べてくれる。不思議と弱い部分をさらけ出せた。背丈はそんなに変わらないけど、私より大きな手で。



「隊長。またこんなところに」



「飛来か」



「風邪ひきますよ?今日は冷えますから」



「そうだな」




「そうだなって…また悩み事ですか」



私が高台にいるときはほぼそれだ。風にあたりながら感情や気持ちの整理をする。誰にも悟られないように。



「悩みか。あるとすれば、お前のサボり癖だな…」



飛来は苦笑しながら、冗談きついっすよと一言。そして核心めいたことを言い放った。



「日番谷隊長、探していましたよ。霊圧を消すだけではなく、ご丁寧に結界まで張ってどうしたんスか?」



「……」



「話したくないならいいっスけど。俺はちゃんと伝えましたからね。あとはご自分で判断してくださいね」



そういうと飛来は執務室に戻って行く。別に避けているのではなく、顔を合わせたくないというのが正しい。悪い意味では決してない。下から聞こえる松本と桃の声。毎年、この時期になると今年はどうするの?と尋ねてくるのだ。



「飛来だけじゃあの2人は抑えられないな」



仕方なく、私も戻ることにした。いい加減、個々で考えて欲しいなと思うが、考えた結果がこうなっているのだろう。



「千鶴ちゃん!どこ行ってたの!?」



「そうよ!!千鶴はサボっちゃダメよ!」




「サボリ魔のお前がいうな。つか、今年も懲りずに来るな。そして私に助けを求めるな、毎回、毎回。少しは自分で考えろ。それよりも仕事はどうした?こんなところでほっつき歩いて。桃は別として松本。お前は明らかサボりだろ。サボらないで仕事するのが最大のプレゼントになると思うけどな」




「うっ。千鶴。冗談きついわよ」



どこが冗談に聞こえるのだろうか。飛来もそうだが、彼女も真面目にやれば仕事は早い方だ。なのにやらないのだ。



「で、私にどうしろと?」



一通り説教が済んだところで一応、2人の話を聞くことにした。安心したのか、笑みを浮かべながら話し始めた。














§§§§



桃と松本の話を聞いてから1日が経とうとしていた。なんでそうなったかわからないが。話を聞いていた飛来も頷き、私を差し置いて話は進んだ。そんな私は十番隊の隊首室の前にいるわけで。あのあと、ここの主と見事に会い、強制的にこいつの部屋に行くことに。直球に聞いたら明日、隊首室に昼過ぎに来いとのことだった。できれば弁当も頼むということで。




「冬獅郎。入るよー」



返事を聞く前に扉を開ける。勝手に開けると怒るのだが、私だとわかっているのでそれはなかった。近くに荷物を置き、冬獅郎に近づく。


「大丈夫?終わりそう?」



「終わるように見えるか?」



「頑張れば終わるんじゃない?」



私の笑みを見て怒りを覚えているのは間違えないだろう。不意に手を引かれ倒れそうになるがそこはうまい具合に調整してくれたらしく、彼のところにすっぽりとはまった。抱きしめられてる感じに近い。




「あのー」



「約束だろ?」



「したけど…この状態で書類整理はどうかと思うよ」



「今日くらいいいだろ?」



「良くはないけど。それで仕事が捗れば…」



私の返答に納得したのか、すぐ終わらせると言って筆を走らせた。これだけやる気を出しているので良しとする。


























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