ドクターX(cp)

□第2話 苦悩
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原「今日も泊まりですか?」

世間では夕食を終えのんびりとしている時間帯。未だに院内に居た加地を見て思わず呼び止める

加地「いや。今日はさすがに帰るよ」

原「そうですか。無理は禁物ですよ。ではお先に」

加地「あぁ。お疲れ」

いつもより早く帰れるかと思うと医局へと戻る足も早くなる。まぁ早く帰っても誰が居る訳ではないのだが。広々としたベッドで眠れるだけでも良しとするべきだ。

ーガチャー

昼間のような賑やかさはないがどの時間でも誰かしら人は居るもの。特に気にする事なく扉を開けた加地だが中に居た人物を見て一瞬固まった

加地「!」

緊急オペが入り定時で上がってない事は知っていたがまさかまだ居るなんて思っておらず目の前にいる女から視線を外せずにいると突然視線がぶつかって少し後ずさる

加地「怖ぇーよ。目が。なんでまだ居るんだよ」

未知子「…ちょっと気になる事があったから。もう帰る」

加地「さっきの患者か?」

どれだけバイタルが安定していても絶対大丈夫とは言えないが先程の手術は自分も助手として入っている。それに執刀医が大門なだけに何も気になる事はないのだが大門の発言が引っ掛かるのもまた事実だ。

未知子「違う」

加地「じゃあ誰だよ」

パソコンの前でずっと何かを見ている大門の後ろに回り画面へと視線を移すと明日手術予定の患者の画像が目に写る。自分からすれば何も気になる事はないがパソコンの横に置かれたノートを見て何も言わずその場から離れた。
一昔前なら余計な口を挟んでいただろうがあのノートが何かを知っている。だからこそ自分のパソコンを手に大門の横へと腰をおろした。

未知子「なに」

加地「そのオペの助手も俺だ。お前がどう考えているが知る権利がある」

助手として入る時は急な術式変更は当たり前として手術に挑むが自分の考えを遥かに越えてくるのが大門だ。彼女の考えを全て汲み取るのは不可能だがせめて"良いオペが出来た"と言う一言が聞きたい。

未知子「ここが気になる。何もないかも知れないけど画像だけでは判断しきれない」

加地「開けてから最終的にどうするか決めるんだな」

未知子「そう」

加地「ならお前が思い描いている術式を全て言え」

未知子「なんで」

加地「言っただろ。俺は助手だ。何があってもフォローするのが俺の仕事だ」

未知子「…………」

カルテに夢中になり帰りが遅くなる事もごく稀にあったりする。その現場を見られる度に何だかんだと言われる事はあっても今のように一緒に考えてくれる事は一度も無かったというのに。一体どうゆう風の吹き回しだろうか。

未知子「加地ちゃん何か変な物でも食べた?」

加地「お前と違って拾い食いなんかしねぇよ」

未知子「私だってそんな事致しません」

加地「そうかよ」

未知子「何か怖いんですけどー。」

加地「うるせぇな。早くしろよ。遅くなるだろ」

妙に優しい加地が少し不気味でもあるが今はそこを気にしている場合ではない。完璧な手術をするには何が起きても対処出来る準備が必要だから。頭の中で何度もシミュレーションしながら全ての術式を加地へと伝えた。


















加地「これで全部か」

未知子「うん」

小一時間ほどで終了した二人きりの打ち合わせ。パソコンを閉じ軽く伸びをしながらロッカールームへと消える大門を横目に加地も帰り支度を始める

未知子「お疲れ」

白衣を脱ぎ手荷物を取るだけの大門はすぐさまロッカールームから顔を出すと颯爽と加地の後ろを抜け出入口へと足を向けた

加地「待て」

未知子「まだ何か」

加地「送って行く」

未知子「なんで」

加地「なんでもだ」

中身はデーモンでも見た目はかなり良い女。夜道を一人で歩かせる訳にはいかない。実際、一度襲われた経験があるから尚更一人で帰す訳には行かなかった。あの時は何やら色々と渦巻くものがあり意図的だったようだがあんな思いは二度と御免だ。

未知子「送って貰う理由がない」

加地「途中で旨いもんでも買ってやるから乗って行け」

食べ物で釣るなんて子供じみているかも知れないが時間も時間なだけにお腹も空いているはず。そして何より食い意地を張ってる大門の事だ。すぐに食い付いてくるだろう。

未知子「本当に!?お腹空いてたんだよねー。ほら早く帰ろ」

加地「分かったから引っ張るな」

予想通りの反応とはいえ笑顔で自分の腕を引く大門に苦笑混じりに返事を返しながら足並み揃え車へと向かった







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