ドクターX(cp)

□第2話 苦悩
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原「…加地先生は彼女の事をどう思ってるんですか」

加地「なんだよその質問」

原「いえ。抱き付かれて満更でもない顔をしていたのでどうなのかと」

息抜きに女遊びが出来るお店に行く事は多々あるが互いにいい歳だ。真面目な話はそうする事はない。それに仮にも彼は先輩で今は部長。気軽に突っ込める内容ではないので避けてきた話題だが今はお酒の勢いもありついポロリと聞いてしまった

加地「お前も相当疲れてるんだな」

原「はぐらかさないで下さい」

加地「早目に眼科に行けよ」

原「加地先生」

加地「なんだよ」

原「本当はどう思ってるんですか」

手にしていたグラスをテーブルへと置き真っ直ぐに見据えると観念したのか料理から視線を外しこちらへと視線を向けてくれた

加地「どうもこうもアイツは今も昔も悪魔だよ」

昔は人の気持ちを踏みにじる悪魔で今は人の気持ちを翻弄させる悪魔。どちらにせよ自分の手に負える相手ではない。

原「加地先生は魔術師じゃないですか」

加地「なんだよそれ。そもそも悪魔に魔術なんか効くわけねぇだろ」

原「そうですか?加地先生と居る時は昔のような棘は感じられないですよ」

蛭間院長や丹下副院長の前では相変わらずの態度だが加地と居る時の彼女は悪態をつきながらでもどこか穏やかだと感じてしまうのは自分の気のせいだとばかり思っていたが今は気のせいだとは思わない

加地「アイツにとって俺はただの助手。それだけだ」

原「今の言い方だと加地先生はそうは思ってないって事ですよね」

加地「お前…」

普段から控えめであまり鋭さを感じる事はないが時折感じる勘の良さ。まぁ医者をしている以上そうゆう勘も必要だが今発揮するところではない。

加地「勘繰り過ぎだ。お前が想像してる関係でもなければそんな感情もない」

原「えぇー。絶対嘘ですよ!昨日の二人は絶対何かありますって!」

先程まで穏やかに話をしていたのに急に大声を出し始める原に加地は顔をしかめる。今でも十分鬱陶しいというのに酒が回った今。鬱陶しい以外の何者でもない。

原「今日は吐くまで帰しませんからね!」

勝手に二人分のお酒を追加する原にもう溜め息しか出てこない。"そうゆう感情がない"それは嘘になるが何もないのも事実。一体この男は何を聞きたいというのだろうか。まぁ普通に考えれば大門への気持ちを認めて欲しいだけだと思うが見込みがない相手を想っているのだ。誰にも打ち明けるつもりなどない。

加地「本当に鬱陶しい奴だな」

原「何とでもどうぞ!」

加地「一人で盛り上がってろ」

何を言っても無駄な事だろうし向こうが先に潰れるのも目に見えている。グビグビとお酒を流し込む原と同じように喉へと酒を流し込むと永遠と終わらない話に付き合った。





















加地「あ"ぁー。もう。本当に面倒な奴だな」

隙を見て何度か抜け出そうとはしたがその度に捕まり完全に酔い潰れるまで待っていたがその後が大変だ。おぼつかない足取りの原を肩で支えながら店を出ると辺りを見渡す。するとすぐに目的の物を発見し手を挙げると近付いてきたタクシーに原を乗せた。

加地「お願いします」

その声と共にパタリとドアが閉まり走り出す。やっと解放されたと小さく息を吐くとゆっくりと歩き始めた。火照った体を冷やそうと歩いてみたが秋の夜風は身に染みる。少し背を丸めながら居酒屋のやり取りを思い返していた

加地「(アイツの中ではもうデーモンと付き合ってる事になってるんだろな…)」

酔っ払い相手にムキになっても仕方がないので適当に聞き流していたのだが否定をしないのを良い事にどんどん妄想がエスカレートしていき最終的にはとてもお似合いだと言われ続ける羽目に。
本当にくだらない話しで現実に起こりうる出来事ではないのに思い返している今。口元が緩むのは心の奥底で喜んでいる自分がいるからだろうか。そんな自問自答を繰り返しながら加地は家路へと急いだ









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