ドクターX(cp)
□第3話 兆し
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晶「未知子。いつまで寝てるの」
一度は起きてきたものの再びソファーへと寝転がり夢の世界へと旅立っている未知子に呆れ顔で晶は声を掛ける
未知子「んー。起きてるよ」
晶「貴女休みの日に出掛ける友達ぐらい作りなさい」
未知子「いりませーん」
晶「なら男でも作ったらどうなのよ」
未知子「もっといりませーん」
起き上がり軽く背伸びをすると渇いた喉を潤す為に冷蔵庫へと足を向ける。そんな未知子に小さな溜め息をもらしつつ言葉を続けた
晶「貴女もいい歳よ。そろそろ考えなさい」
未知子「何を」
晶「私が居なくなった後の事とか」
気だるそうに耳を傾けていた未知子だが晶の発言に一瞬動きを止めすぐさま振り返ると鋭い視線を向ける
未知子「…なんでそんな事言うの」
険しい表情とは裏腹に弱々しい声。どうゆうつもりかは分からないが冗談でもそんな事を言って欲しくない。過去に一度失いかけた事があるからその時の記憶が蘇るー。
晶「私はもういつお迎えがきてもおかしくない歳よ」
未知子「そうかも…そうかも知れないけど……」
何故そんな事を言うのか。晶の考えている事が全くが分からず何とも言えない不安が押し寄せる。今にも涙が零れ落ちそうになるが、ふとまた病気なのではと思い慌てて駆け寄った
晶「どこも悪くないわよ」
未知子「もう!本当に何。意味わかんないんだけど」
病気ではないと知り安心したのも束の間。からかわれたのかと思うと怒りも沸き上がってきて少し乱暴に椅子へと腰かける
晶「ごめんさない。ちょって気になっただけよ」
未知子「なら普通に聞けばいいじゃん」
晶「普通に聞いても教えてくれないじゃない」
いつもと変わらない穏やかな口調。流そうと思えば簡単に出来るのに珍しく自分の交友関係について問うてくる晶に少し勘繰ってしまった
未知子「ねぇ。何企んでるの?」
晶「何も企んでないわよ」
未知子「じゃあ、なんでそんな事聞いてくるの。普段そんな事聞いてこないじゃん」
晶「育ての親として貴女の将来を心配してあげてるのよ」
初めから気が強かった訳ではない。今のような性格になったのは少なからず自分の責任でもある。あの頃は1日でも早く腕の良い医者にする為に毎日が必死で女としての幸せまで考えてあげる余裕がなかった。今更だがそれを少し後悔していたりするのだ。
未知子「大きなお世話なんですけど」
晶「大学病院なら選り取り見取りじゃない。一人ぐらい居ないの?」
未知子「いないいない。雑な手術する奴ばっかり」
晶「あらそれは駄目ね」
未知子「でしょ。あの病院でまともな医者は一人だけ」
晶「一人?誰かしらね」
未知子「加地ちゃんだよ。晶さんも良く知ってるじゃん」
その名を聞き晶の表情が少し和らいだ。この話題を振ったのは只の気紛れではない。先日病院に行った際、偶然原と出会い例の写真を見せられたから。何故そうゆう事になったのかは原も知らないようだったが、この写真が撮影された日と上機嫌で帰ってきた日が同じだった事もあり未知子の方も満更ではないのかもと思い聞き出すタイミングを伺っていた。
晶「なんだ加地先生。確かに腕は良いわよね」
まともに聞いても絶対に否定されると踏み回りくどい聞き方をしたがやはり自分の勘は当たっていたようだ。当の本人に自覚はないようだが好意を抱いている事は間違いない。ただ恋愛というものに疎すぎて進展する見込みはなさそうだがー。
未知子「腕だけね」
晶「良いじゃない腕だけで。アンタ立候補しなさいよ」
未知子「何に」
晶「加地先生のお嫁さんに」
未知子「はぁ?何でそうなるの?意味分かんない」
本当に今日の彼は何なのだろうか。患者の話しや術式の話しそれ以外の医療に関する話しは数えきれない程してきたが一緒に働いてる人の話しやまして"結婚"をほのめかすような話題は一度もないというのに。
晶「お金もあって腕が良いのよ。言うことないじゃない」
未知子「性格が悪い」
晶「それはお互い様」
未知子「私のどこが悪いのよ」
晶「嫌ね。無自覚なの?そりゃ男が出来ない訳ね」
未知子「うるさい。いらないって言ってるでしょ」
色々引っ掛かるところもあるが話を続けたら自分が損するだけだと思いコップに入っているお茶を飲み干すと自室へと姿を消した
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