ドクターX(cp)

□第4話 風邪
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多古「おはようございます。大門先生」

未知子「…おはよ」

成り行きで手術に入って貰ってから何故か共に行動をする事が多くなった新人の多古。怖がりながらもなつかれたようで普通に接してくるのだが、あまりそうゆう経験が無いので時々鬱陶しいく感じ適当に返事を返す

多古「あれ?何か元気ないですね」

未知子「うるさい」

多古「すいません…」

余計な事だったかも知れないがいつもと雰囲気が違う彼女を心配しての発言。自分に非はないと思いつつも大門にそう言われると何故か謝罪の言葉しか出てこなくて少し縮こまる。医者としては心から尊敬しているが人として少し困った人だ。

多古「あれ。どこ行くんですか。カンファレンスの時間ですよ」

未知子「今日はパス」

多古「えッ!?パスって何ですか!?」

手術以外の事をしないのは重々承知済みだがカンファレンスは手術と同じぐらい大事な事。そう思っているからカンファレンスだけは必ず顔を出しているものだと思っていたのに。本当に今日の彼女はどうしたと言うのだろうか。視線の先にもう大門の姿はないが暫く扉の方を見続けた


















未知子「(……ハァ)」

医局を出て人通りが少ない場所へと移動してきた大門は壁に寄り掛かる。背中から伝わる壁独特の冷たさは熱を帯びている今の彼女には刺激が強すぎて無意識に溜め息がもれた。体調には気を付けているつもりだが昨夜はノートをまとめるのに夢中になりそのままデスクで眠ってしまった。完全に自分の落ち度だ。

博美「あれ。どうしたの。こんな所で」

目的の場所に行くのに近道だからとこの通路を選んだのだが角を曲がってすぐ視界に写った人影。普段からどこに居ても目立つ大門だが人気がない廊下のど真ん中で腕を組み俯いている彼女はより一層目を引いており思わず声を掛けてしまった

未知子「…おはよ。考え事してただけ」

聞き慣れた心地良い声に張り詰めていた気持ちが少し和らいで視線だけを城之内へと向ける

博美「こんな人気のない所で何の考え事よ」

珍しくナイーブな空気を纏っている大門にやっと恋心でも芽生えたのかと小さく笑いながら彼女へと近付く。滅多に見れない彼女の姿にもう少しからかってみようと思っていたのに距離が縮まるにつれてハッキリと見えてくる大門の表情。その表情は普段の覇気のある顔とも疲れている時に見せる顔とも違うくて城之内は一気に不安に駆り立てられた

博美「ぇッ…。何…。具合悪いの!?」

奇跡的な生還から早二年。定期的に検査は受けているだろうが病気が発覚した時もそうだった。ちゃんと人間ドッグを受けていたにも関わらず発見する事が出来ず生死をさ迷ったのだ。ちょっとした事でも心配になるのは当然の事だろう

未知子「そんなんじゃないよ。午後のオペよろしくね」

顔を上げた大門は城之内の肩をポンッと叩くといつのように颯爽と歩き始める。静かな廊下に響き渡るヒールの音。普段なら自信に満ち溢れた彼女の音だと安心するのに何故か今日は心が落ち着かなかった


















加地「デーモン。カンファレンスさぼって何してた」

手術が趣味の彼女にとってカンファレンスはとても重要なものなのに参加しなかったのはそれ以上に何か気になる事があったという事。だが手術以上に興味を引かれるものとは一体何なのだろうか。

未知子「回診」

加地「嘘つけ。お前はそんな患者思いじゃねぇだろ」

未知子「うるさいな。どうせ私にオペさせてくれないじゃん」

手術が必要な患者は全て自分が担当したいぐらいなのに大きな手術からはいつも外される。最終的に手術に入る事は多々あるが今日は前もって決まっていた手術以外入るつもりは無かったから参加しなかった。ただそれだけだ。

加地「お前が無茶ばかりするからだろ」

未知子「そうですねー。全部私のせいですよ」

午後の手術に備え少しでも体力を残しておきたくて適当にあしらいパソコンへと視線を向ける。軽口を叩くのはいつもの事だが何処と無くキレがない大門に何とも言えない不安が襲ってきた。

加地「…どうした」

未知子「何が」

加地「何か変だろ」

未知子「なにそれ」

加地「何か隠してるだろ」

未知子「隠してません」

体の怠さに加え頭痛まで出てきており全ての音が癪に触る。画像から視線を外し鋭い視線を加地へと向けると眉を潜めながらも何も言わず自分の業務へと戻ってくれた







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