ドクターX(cp)

□第5話 風邪(2)
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次の日

多古「おはようございます。加地先生。原先生」

加地「…朝から元気だね」

原「おはよう。多古君。若いって良いですよね」

若手には若手の苦労も多々あるだろうがそれと同じぐらい夢や希望も抱いているはずだ。沢山の経験を積み早く一人前になりたいという明確な目標がある彼らに対し自分達は経験を積むほどに権力というものに振り回され腕を磨くよりも根回しが上手くなる。一体何の為に医者になったのかと考えさせられる日々だ。

多古「良くないですよ。僕達だって苦労してます」

原「後数年もすれば分かるさ。権力の怖さを」

多古「なんですかそれ」

加地「今はまだ知らなくて良い事だ」

ある程度の経験を積めば大学病院を出る事だって可能で必ず組織の色に染まるという訳ではない。それにどうゆう道を歩むかはこれから決めていく事。曖昧な情報に翻弄され若手の未来を潰すような真似はしたくないので加地は横から口を挟んだ

多古「良く分からないけど…分かりました」

原「あれ。そういえば大門先生は?」

自分から振った話題とはいえ少し空気が重くなった事に後ろめたさを感じ別の話題を二人へと振った

多古「そういえばまだ見てませんね。急病人と遭遇したんですかね?」

周りを見渡すと他の人も同様に首を横に振る。性格にも言動にも問題が多いが理由もなく遅れてきたりする人ではない。来るまでの間に病人と遭遇したかここへ来て容態が悪い患者と鉢合わせしたかのどちらかだろう。

加地「デーモンなら……」

ーガチャー

昨日は周りに隠して欲しい感じがあったので城之内以外に悟られないよう気を遣ったがもうその必要はない。風邪だから休みだと言おうとした時。医局の扉が開き皆の視線がそちらへと向いた

加地「!」

多古「大門先生!おはようございます」

原「ギリギリでしたけど何かあったんですか?」

時計に視線を向けると就業時間まで後数秒。いつもと変わらず颯爽に歩きながらロッカールームへと消えていった大門に問い掛ける

未知子「べつに」

白衣を羽織り出てきた大門はストレッチ用の紐を回しながら適当に返事を返す。昨日よりかは大分顔色は良いが万全ではないはずだ。これからまた上がる可能性だってあるのに普通に出勤してきた大門を帰らそうと加地は立ち上がった

加地「デーモ…」

ーガチャー

先程よりも勢い良く開かれた扉により遮られた言葉。文句の一つでも言おうと入ってきた人物に視線を向けたが少し怒っているようだったので言葉を飲み込んだ。彼女が怒っている理由は多分自分と同じだと思ったからー。

博美「やっぱり居た…」

未知子「おはよー」

呑気にストレッチしながら挨拶をしてくる大門に大きな溜め息をつくと中に入り彼女の腕を引いた

博美「…ちょっと来て」

聞かれてまずい話しではないが突き刺さる視線が痛くて大門と共に医局を出る。一体何事かとその場に居た皆が顔を見合せているなか一人だけ動いた

原「加地先生?どこ行くんですか」

加地「すぐ戻る」

昨日は気付いたのが遅かったのと彼女に押しきられ仕方なく残らせたが今日はそうゆう訳にはいかない。人の話を聞かないのは重々承知済みだが放っておく事も出来ず小走りで二人の後を追った。


















博美「帰ろ」

昨日の朝二人が会った人通りが少ない廊下まで彼女を連れていくと近くにあった椅子へと並んで腰掛ける

未知子「昨日はありがとね」

博美「まだ熱下がってないでしょ」

話を逸らす大門の額に手を当てるとチラリと視線を向けてくれたので今度は自分の額を当て体温を確認していると二人を追ってきた加地が現れた

加地「…どうだ城之内」

綺麗な女性二人が額を合わせている姿なんてそうお目にかかる機会なんてなくつい魅入ってしまったが突っ立っているだけなのも変に思われるので遠慮がちに声を掛けた

博美「帰って貰うべきですね」

正確な体温までは分からないが出勤出来る体温ではない。実際マネージャーである晶から今朝連絡があった。少し目を離した隙に出て行ったから連れ戻して欲しいと。

未知子「大丈夫だって。オペがあるから戻るよ」

加地「大門。いい加減にしろ」

歩き始めようとした大門の腕を掴むと自分の方へと引き寄せた。こんな場所で抱き締めるつもりはないが怒っていると伝える為にー。痛いぐらいに掴まれて少し眉を潜めたが名を呼ばれた事に驚いて少し間が出来る

加地「車呼ぶから」

未知子「離して!帰らない」

勢い良く腕を振り払い鋭い視線を向けたが普段身に纏っている温厚な空気感ではない加地がそこにいて視線を逸らしてしまった

加地「…勝手にしろ」

呆れる訳でもなく吐き捨てられたような言葉が静かな廊下へと響き渡る。そのまま背を向け医局へと戻った加地を見つめていると不意に話し掛けられそちらへと視線を向けた





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