ドクターX(cp)
□第6話 変化
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加地「…なんだよ」
未知子「何も言ってない」
加地「見てるだろ」
大門が復活してから数日。日常が戻りつつあるなか加地だけは穏やかではなかった。
未知子「見てるだけじゃん」
ふと加地の脳裏に浮かんだ以前の会話。今と同じようなやり取りをしている最中に話が脱線し真相を聞けずにいたなと思っているとあの時と同じようにあの男が割って入ってきた
原「大門先生は加地先生の事が好きなんですね」
空いている席に座っている事が多いが"部長"としての席はちゃんとあり珍しくその席に座って加地は作業している。そしてその真向かいが大門の席で中間に位置する場所に座っているのが原。見つめ合っている訳ではないが真横から感じる熱視線に思わず問い掛けてしまった。
未知子「んー。そうかもね」
一同「「「「「!!!!」」」」」
医局には他にも人が居たが今のようなやり取りはよくある事で誰一人として気に掛けていなかったが大門の爆弾発言で皆の動きが止まる。勿論この二人も例外ではない。
自ら振ったとはいえまさかそんな言葉が返ってくるなんて予想もしていなくてすぐに加地へと視線を向けた。すると向こうもこちらに視線を向けており互いに目線でメッセージを送る。
既に原の中では肯定されている事だがその目は何かあったのかと訴えていてそれに答えるかのように加地は首を横に振った
未知子「オペ行ってきまーす」
突然のざわつきに首を傾げながらも自分には関係がないので何事も無かったかのように医局を出る。そんな彼女を横目に加地はポツリと呟いた
加地「…怖い」
原「加地先生?」
加地「怖い。怖い。怖い」
ただの気紛れで特に意味などないと頭までは分かっているが感情がついてこなくてつい出た言葉。何気無い一言で揺さぶられてしまうなんて本当に重症だ
原「加地先生の魔術。凄いですね」
加地「またそれかよ。悪魔に魔術なんて効かねぇって言っただろ」
多古「調べてみましょうか?」
加地「なんでだよ!てかやめろ!」
今や誰もが手にしているスマートフォン。通信機能だけではなく気軽に調べ物が出来るとあって重宝しているものだが何でも調べられるのも少し考えものだ
多古「悪魔 魔術…………黒…魔術」
二つの言葉を並べ検索すると出てきたのは予想とは少し違う"黒魔術"という記事。横から画面を覗き見た原はすぐさま多古へと視線を向けた
原「それはちょっと違うんじゃない?」
多古「えぇー。でも面白そうですよ」
加地「だからやめろって!」
多古「黒魔術とは…」
やめろと言っている割には阻止する動きもなく小さな画面に写し出されている文字を読み始めるとそこに居た全員が多古の話しに耳を傾けた
一同「「「「「へぇ〜」」」」」
黒魔術なんてものに全く興味はないのについ聞き入ってしまった挙げ句。想像を絶するような内容で感心すらしてしまった。
加地「って感心してる場合じゃねぇよ。ほら仕事に戻れ」
くだらない話をしている事が多く時々忘れてしまいそうになるが仮にもここは人の命を預かっている場所。それも格式高い大学病院だ。緩みきった気を引き締め直すかのような声に皆が仕事モードへと頭を切り替えた
加地「デーモン。さっきのあれは何だ」
手術を終えた時間がお昼だったのもあり戻るや否や食堂へと向かった大門から遅れる事数分。彼女が座っている席に足を向けた加地は向かい合わせになるように腰をかけた
未知子「何の話し」
加地「オペに入る前の事だよ」
手術前という事は軽く二時間以上前の話しでいちいち覚えてないのが正直なところ。それを口に出したくても口一杯に頬張り過ぎて喋れなかったので少しだけ思考を巡らせてみた。
未知子「…あぁー。あれね」
加地「それだ。どうゆうつもりだよ」
何を思い出したかは知らないが多分同じ事を考えているだろうと自分に言い聞かせ話を先に進める。
未知子「別にー。意味なんてないよ」
加地「お前。原の言ってる意味理解してるのか?」
未知子「は?なにそれ。私は聞かれた事に答えただけ」
加地「…ならお前は俺を好きだと。そうゆう事だな」
チラリと大門へと視線を向けるが相変わらずお昼に夢中で小さな息を吐く。自分が望んでいる答えは聞けないと諦めお昼へと手をつけようとした時。顔を上げた大門はふと呟いた
未知子「…嫌いじゃないからそうゆう事になるね」
加地「!」
未知子「ご馳走さまでした」
加地「ちょっと待……」
こちらの呼び掛けを華麗にスルーし行ってしまった後ろ姿を見ながら項垂(ウナダ)れる。本当に誰か彼女の取り扱い説明書を作ってくれないだろうか。あのぼったくりマネージャーに本気で頼みに行こうかななど考えながら急いで昼食を取った
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