ドクターX(cp)
□第11話 愛望
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多古「ありがとうございました!」
加地「経過観察怠るなよ」
病院に着いてから三十分足らずで来た道を戻る。予想通り縫合不全の予兆が見られたがまだ手術してから日が経ってない事や検査の数値がそこまで悪く無かった事。そして患者が高齢だった事もあり再手術は見送ったのだ。
多古「はい!大門先生もありがとうございました!」
加地に連絡したはずなのに先に現れたのは大門で本当に驚いた。すぐに治療に掛かったので結局その真相は聞けず仕舞いだったが何よりも先にお礼だと頭を下げる。
未知子「うるさい」
多古「でも何でここに居るんですか?」
未知子「アンタに関係ない」
多古「そうですけどー」
未知子「医師免許持ってるならこんなことで呼ぶな」
手術が必要で連絡してきたならまだしも特に緊急性が感じられる症状ではなかった。新人と若手だけだとはいえ医師免許があるなら自分達で考えるべきだ。
多古「すいません…」
加地「デーモン。もう黙ってろ」
自分達で考えるのも勿論大事だが判断に迷ったら指示を仰ぐのは間違いではない。こうして出向いたのが無駄足になってしまったとしても何事もなかったのならそれが一番だ。
加地「指示を仰ぐのは悪い事じゃないアイツの言う事は気にするな。それじゃあな。お疲れさん」
あからさまに肩を落とし萎(シオ)れてしまった多古の背中をポンッと叩くと少し先を歩く大門の元へと足早に向かう。
多古「…お疲れ様でした」
何故一緒にいるのか凄く気になるが並んで歩く二人の背中はいつもの二人ではない。いや。大門は至っていつも通りだったが加地が隣に立った時の彼女のオーラが穏やかな感じがして呆然と立ち尽くしながら二人を見送った。
加地「何か買って帰るか?」
未知子「どうしよう。ここまで来たなら紹介所に寄っても良いんだけど」
加地「何の話だよ」
お酒はあるがそれ以外の物がないので聞いたのだが返ってきた返事はまたもや良く分からないもの。目的地によって進む方向が決まるので車を発進させず大門へと視線を向けた。
未知子「今日泊めてくれるでしょ?」
加地「…俺はそのつもりだけど」
それを決めるのは大門自身だが少なくても自分はそのつもりだ。それが何だというのか。
未知子「着替えとか欲しいから取りに帰ろかなって」
ディスカウントショップならまだ開いている時間帯だしそこなら大体の物を買い揃える事が出来るが病院からなら紹介所の方が近い。
加地「あぁ。了解」
男である自分には良く分からないが女性には色々とあるものだ。"お泊まりセット"と呼ばれる物が存在している事も知っている。その中身が何なのかも大門がそんな物を持っているとも思えないがとりあえず着替えは必要だと紹介所へと向かった。
未知子「お待たせ。はい。晶さんから」
荷物を取りに行ったわりには些か小さめなバッグだなと思いつつ手渡された物を受け取る。中を確認しなくても長細い紙袋を見れば何が入っているか検討がつくが一応手に取ってみた。
加地「あの人から何かを貰うって後が怖いよな」
未知子「そう?でもなんでワインなんだろ」
加地「さぁな。まぁ有り難く頂いとくよ」
ワインに詳しい訳ではないが多分そこそこ良い代物だ。深い意味はないのだろうがあの人なりの"祝福"だと思い素直に受け取っておく事にした。
加地「そういえば。丹下副院長の話って何だったんだよ」
蛭間とタイプは違うが丹下もまた大門を良いように使い良からぬ事をしようとしている一人。蛭間が拘置所から戻って来てからは益々ヒートアップしている二人の戦いに巻き込まれているのではないかと少し気になった。
未知子「オペの話。後は覚えてない」
話の大半が下らない事だったので正直内容なんて覚えてない。最後に少し手術の話しもしたが時間切れとなり部屋を出てきたのだ。
未知子「あっ。でもスイーツは美味しかった」
加地「そりゃ良かったな」
すぐに食べ物につられるこの性格を何とかしたいと思いつつもその策がない。手術と食べ物を制御すると子供よりも質が悪くなるから。
未知子「今度買ってよ」
加地「何を」
未知子「美味しい物」
加地「何で俺なんだよ」
未知子「えぇー!私のお願い聞いてくれないの!?」
加地「着いたぞ」
未知子「すぐそうやってはぐらかす」
加地「早く降りろよ」
お願いを聞くのは良いが彼女には見境がない。とはいえ誰構わずついて行かれても困るので食べ物だけは買ってやろうと思いながら部屋へと上がった
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