ドクターX(cp)

□第14話 余韻
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翌朝

加地「…」

小さく身をよじり瞳を開けると手を伸ばし手探りでスマホを探し当てる。時間を確認すると時刻は八時前。決して早く寝た訳ではないが普段の睡眠時間を考えるとそこそこ寝た方だ。

加地「綺麗な顔してるよな…」

腕の中にいる彼女も相当綺麗で可愛かったが眠っていると更にその美しさが引き立って本当に天使のようだ。このまま寝顔を見つめていたい所だが色々としたい事もある。そっと彼女から離れ起き上がろうとしたら微かに瞼が動いた。

未知子「ン…」

加地「悪い。起こしたか」

ゆっくりと開かれた瞳に申し訳なさそうに声を掛けると何度か瞬きをした後。再びその瞳は閉じられた。

未知子「あと……一時間……」

休みなので寝ているのは構わないが五分でも十分でもなくまさかの一時間。寝惚けているのか本気なのか。どちらかは分からないが思わず笑ってしまった。

加地「了解」

何も身に纏ってない彼女が風邪を引かないよう布団を掛け直すとベッドから降り暖房の温度と加湿器を調整し落ちているバスローブを拾うとそっと扉を閉めた。

加地「(ちょっと出るか)」

彼女の服も洗濯出来ていないし朝食の買い出しにも行きたい。この辺は近くに色んな店があり一時間もあれば大抵の用事は終わるだろう。中身は子供でも彼女だって立派な大人だ。一人で置いて出ても何も問題ないだろうとサッとシャワーを浴びたあと家を出た。



























加地「………」

コインランドリーで少し時間を取られ戻って来た頃には九時半を回っていたのだがリビングの扉を開け飛び込んできた光景に言葉が出て来なかった。

加地「…何でそんな格好で寝てんだよ」

起きてシャワーを浴びるのもリビングで寛(クツロ)ぐのも大いに結構だが何故彼女はバスタオル一枚のままソファーに寝ているのだろうか。手にしていた荷物をテーブルへと置くと彼女の横へと腰掛けた。

加地「デーモン。起きろよ」

服一式と二人分のバスローブを持ってコインランドリーへと行ったのだ。当然下着も自分が持って出たので今の彼女はバスタオルが巻かれているだけ。その姿だけでも十分刺激的だが座ったまま横に倒れ込んでいるので際どいを通り越し完全にアウトな状態だ。そんな姿を見てしまうと昨夜の行為がフラッシュバックして触れたくなったがその衝動を抑え洗濯が終わったばかりのバスローブを彼女へと掛けた。

加地「デーモン」

未知子「ン…」

反応はしてくれたが瞳は閉じられたままで起きる気配はない。ベッドなら放っておくがさすがにこんな格好のままソファーに寝かしておく訳にもいかず声を掛け続ける。

加地「何でここで寝てるんだよ」

未知子「…服がない」

加地「ほら。着替えてこい」

ゆっくりと怠そうに起き上がってきた彼女はとりあえず紙袋を受け取ってくれたが動く気は無さそうだ。起き上がった事により落ちてしまったバスローブを肩から掛けるとまだ夢現(ユメウツツ)の彼女に一言告げた。

加地「早く行かないと襲うぞ」

未知子「はーい…」

分かっているのかいないのか。バスローブが落ちないように押さえながら立ち上がった彼女は寝室へと足を向ける。寝起きが悪いというか何というか。無防備過ぎる彼女に無意識に出る小さな溜め息。もう若くはないので性欲もそこまで強くないと思っているが彼女を見ているとつい手を出したくなってしまう。

加地「本当。デーモンだよ…」

何度この言葉を口にしただろうか。一度結婚というものに失敗しているので女は嗜(タシナ)む程度の軽い付き合いだけで良いと思っていたのに。年がらにもなく本気で好きになってしまうなんて。それも普通とはかけ離れた悪魔のような女に。人生何が起こるか分からないと良く言うが本当にその通りだなと思いながら立ち上がると寝室へと足を向けた。

加地「入るぞ」

秋が終わり冬へと移り変わった季節の朝は中々の寒さで薄手ながら保温性がある服を着ていたが暖房が効いた部屋では暑すぎる。なので着替えようと声を掛けたが中から返事はない。何となく嫌な予感がして扉を開けるとベッドに横たわっている彼女の姿が目に写った。

加地「何か着ろよ…」

寝るのは全然構わないが何故まだバスタオル一枚なのだろうか。暖房を高めに設定しているので寒くはないだろうがそうゆう問題ではない。それでも彼女を起こす気になれないのは甘やかしている事になるのだろうか。

加地「もう知らねぇからな」

独り言にように呟きとりあえずここに来た目的を果たそうと服を脱いでいると不意に声を掛けられた。

未知子「何してるの」

何となく人の気配がして重い瞼を開けると視線の先には上半身裸の彼の姿が。ゆっくりと瞬きを繰り返し瞼を開けようとしたが眠気には勝てず再び閉じられた瞳。

加地「見ての通り着替えだよ」

彼女を送るまでは家から出る事もないただろうとズボンもラフな物に履き替えると上半身はそのままでベッドへと腰掛けた。





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