ドクターX(cp)

□第16話 恋慕
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恋慕→好きな異性を慕うこと。


















加地「買いすぎ。そんな食べれるのかよ」

彼女は夕飯を済ませているが仕事終わりの加地はまだ済ませてない。だから家に帰る前にコンビニへと寄り色々と見て回っていたのだが何故か持っているカゴがとても重たい。好きな物を入れてくれて構わないがその全てが食べ物で呆れ返ってしまった。

未知子「さすがに全部は食べないよ。明日の朝の分」

仕事が休みなら起きてから考えるが今日は買っておくべきだ。自分は絶対に料理なんかしないし彼が出来るかも分からないから。

加地「あぁ。そうゆう事か」

独身生活が長いが故に料理が出来ない訳ではないが基本はしない。一人分の料理というのは案外難しく何より面倒だから。それに今の時代。料理なんか出来なくても気軽に美味しい物が買えたりする。

加地「朝弱いもんな。買っといて正解」

未知子「弱くない」

加地「起きてくるまでに時間掛かるだろ」

未知子「それは休みの日だけ」

加地「普段は早いのか?」

確かにバタバタと病院に来るイメージはない。病院で出会う彼女は身だしなみもきちんとしておりいつも優雅だから。

未知子「当たり前じゃん。子供じゃないもん」

加地「どうせ起こして貰ってるんだろ」

愛娘のように思っているから甘やかしているのか。単純に世話好きだから全ての面倒を見ているのか。どちらかは分からないが彼女の身の回りの世話は全てマネージャーの晶がしているのだ。当然起こすのも彼の役目なはず。

未知子「一人で起きるに決まってんじゃん」

加地「本当かよ」

未知子「オペが出来るんだよ。早く起きるでしょ」

彼女に取っての仕事とは手術をする事。そしてそれは趣味でもあり特技でもある。つまりはとても大好きで手術をするのが楽しみだという事なのだろうが何て言うか。遠足を楽しみにしている子供が当日の朝。とても早く起きるといった現象に似ている気がしてつい笑ってしまった。

加地「やっぱり子供じゃねぇか」

未知子「どこが」

加地「全部だよ。全部」

子供っぽいというのは言い換えれば"純粋"という風にも取れそれが彼女の魅力の一つでもあるが。言動に幼さが残っているが故に子供っぽさが際立ってしまっている。

未知子「子供じゃない。大人だもん」

一体どの辺が子供っぽいというのだろうか。家事は一切出来ないがそんな人は世の中に沢山いるはずだ。彼の言う"子供っぽい"の意味が分からない。レジへと足を向けた彼の後を追い真横へと立つとお会計をしてる彼へと視線を向けた。

加地「はいはい。未知子ちゃんは大人ですよ」

未知子「あぁー。バカにしてるー。それにまた名前で呼んだ!」

加地「声がでかい。早く乗れ」

見た目は大人だが中身は子供。だから質が悪い。それでも頬が緩むのは彼女が穏やかに笑ってくれるからだろう。会話らしい会話は無かったが嫌な空気感でもなく自宅へと車を走らせた。















加地「先に飯で良いよな」

部屋に合わせ特注した無駄に広いダイニングテーブルに買ってきた物を並べながら向かい側に腰を掛けた彼女へと問う。

未知子「うん」

加地「風呂の準備してくるから適当にしてろ。今食べない物はちゃんと冷蔵庫に入れとけよ」

未知子「はーい」

一度夕食を食べている筈なのに瞳を輝かせながら並べられている物を眺めている彼女にフッと笑みを溢す。何故こんなにも食い意地を張っているのだろうか。考えた所で答えなど出ないので一度思考を閉じバスルームへと足を向けた。










「「お疲れ」」

バスルームから戻り向かい合わせになるように腰を下ろした彼に缶ビールを差し出すと互いに缶を傾けた。

未知子「学会いつ行くの」

加地「木曜だ」

未知子「地方?」

加地「あぁ。名古屋だってよ」

未知子「良いな〜。名古屋って美味しいもの沢山あるよね」

味噌カツ・手羽先・ひつまぶし・天むす・きしめん・味噌煮込みうどん・味噌おでん・あんかけスパ・小倉トースト。スラスラと出てくる料理名にもう呆れを通り越し関心してしまった。

加地「何でそんな詳しいんだよ」

未知子「グルメ雑誌に良く載ってるじゃん」

加地「見たりするんだな」

未知子「読むよ。ファッション雑誌とかも」

加地「どれが欲しい。買って来てやるよ」

未知子「本当!?全部買って来て!」

手を止め身を乗り出す彼女の瞳は期待に満ち溢れておりその願いを叶えてやりたくなるがさすがに全ては無理だ。

加地「バーカ。全部は無理だ」

未知子「えぇー!?何でよ!」

加地「何でもだ。今度連れて行ってやるから今回は諦めろ」

未知子「えぇー。しょうがないな。とりあえずひつまぶしは絶対ね!」

加地「はいよ」

学会とは同じ分野を志す人達の交流と研究成果を発表する場で自分には何の特にもならない場所だ。時間と動力の無駄遣いになるだけで全く気乗りはしないが"目的"が出来ただけで少しばかり気分が違う。我ながら単純だなと思いつつその後も他愛ない会話を楽しんだ。






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