ドクターX(cp)短編

□王様ゲーム
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博美「ねぇ」

未知子「んー?」

医局のソファーに座って知恵の輪を解いていた未知子は視線はそのままの状態で近付いてきた博美に気のない返事を返す。

博美「ちょっとお願い聞いてくれない?」

未知子「どうしたの。急に」

博美「今日の夜。私に付き合って」

医局なので当然人も居るのだがそんな事などお構い無しに意味ありげな言葉を掛けている博美に自然と皆の視線が集まった。

未知子「えぇー」

博美「お願い。ちゃんとお礼はするから」

未知子「お肉!?」

博美「勿論」

未知子「やったー♪」

博美「終わったら迎えに来るから」

未知子「御意ー」

いつもと雰囲気が違う博美の態度に医局に居た男共はざわめいているが未知子だけは上機嫌。そのまま手術室へと行った未知子を横目に残されたメンバーは思い思いの言葉を口にした。

加地「なんだあれ。告白か」

海老名「それはないよ。城之内くんは僕のパートナーだからね」

原「城之内先生。何かあったんですかね」

ふざけている加地はともかく。ニヤニヤと笑っている海老名に冷ややかな視線を送りながら原だけは博美を気に掛けた。

加地「よし。後追うぞ」

原「良くないですよ。そうゆうの」

加地「良いだろ別に」

原「バレたら怒られますよ」

加地「言い訳なんていくらでも出来るだろ」

海老名「加地君。僕は付き合うよ」

原「何言ってるんですか。海老名先生。今日当直ですよね」

海老名「あっ…。」

加地「原。早く仕事切り上げるぞ」

了承なんてしていないが相手は先輩。断れる術もなく急ピッチで仕事へと取り掛かった。

















博美「お疲れ様」

未知子「お疲れ」

就業時刻丁度にやってきた博美と共に医局を出るとエントランスに向かって足並みを揃える。その後ろを追う怪しい二つの影。だけどそれに気付く事なく未知子達は病院の外へと出た。

未知子「どこ行くの」

博美「…怒らないで聞いてね?」

未知子「ん?」

博美「実はねーー」

最近。しつこく付きまとってくる麻酔科医が居て今日は麻酔科医だけの飲み会があるから参加して欲しいと頼まれた。勿論。即答でお断りをしたのだが本当にしつこくて。イエスと答えるまで解放してくれる気配が無かったから条件付きでOKをした。その条件とは自分の知り合いを連れて行く事。そしてそれが未知子だ。

未知子「帰る」

博美「大門さん!本当。お願い」

適当にあしらうつもりでは居るがお酒が入る席で一人というのは心細いし何かと不安だ。勝手な事をして悪いとは思うが今日だけは一緒に居て欲しい。

未知子「…今日だけだからね」

見た目も性格も良い博美には言い寄ってくる男は結構沢山いる。だが子育て中の彼女はあまり興味がないようで適当にあしらっている姿は良く見掛けるが今回は本当に困っているようなので仕方無く目的地へと足を向けた。

未知子「あっ」

博美「なに」

未知子「飲み会なんだし別に誰が参加しても良いって事だよね」

博美「えっ!?それはちょっと違う…」

多分自分と飲む為の口実で"麻酔科医の飲み会"だと彼は言ったのだと思っている。だから参加人数も決して多くはないだろう。それが分かっていたから未知子を誘ったのだ。それを説明したかったのに。気が付いた時には誰かへと連絡していた。











未知子が電話を掛ける少し前の事。二人の後を追っていた加地はふと足を止めた。

加地「原。帰るぞ」

原「えっ!?」

加地「良く分からんが嫌な予感がする」

原「何ですか。それ」

加地「とりあえず帰るぞ」

何かがあった訳ではない。だけど妙な胸騒ぎがして来た道を引き返そうとしたその時。ポケットに忍ばせてあったスマホが小刻みに揺れた。病院からの可能性の方が遥かに高いのに何故か違う気がして恐る恐る画面へと視線を向ける。

加地「………」

原「………まさか。バレたんですかね」

なかなか電話に出ない加地が気になって悪いとは思いつつ横から覗き見すると表示されている名を見てつい出てしまった言葉。

加地「どうだろうな」

何と無くだがそれは関係ないような気がする。とはいえ。それ以外の理由にも心当たりがないので渋々画面をタップした。

加地「も……」

未知子「遅い!」

加地「色々………」

未知子「出来るだけ沢山の人連れて今すぐ来て!」

加地「は?」

未知子「すぐだからね」

その言葉と共に切られた電話。その直後に送られてきたメッセージを見ながら加地は呆然としていた。

加地「何なんだよ」

原「沢山連れて来いとか言ってましたね」

加地「言ってたな」

原「どうします?」

届いたメッセージに記載されている場所に彼女達は居るのだろうが一体何をするつもりなのか。全く検討は付かないが放っておくのも気掛かりだったりする。そして多分。加地も同じ事を思っているはずだ。

加地「ったく。本当迷惑な奴だな」

悪態をつきながらも電話を掛ける加地も見て小さく笑った原は同じように電話を掛け始めた。





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