ドクターX(cp)短編
□王様ゲーム2
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博美「お願い!ちゃんとお礼はするから!ね?」
未知子「嫌だ。そんな知らない人達と飲みに行くなんて」
午前中は手術の予定がなく暇を持て余していた未知子の元へとやって来た博美。互いに腕を認めパートナーだと断言しているだけあって見慣れた組み合わせではあるが。何やら揉めているようで自然と皆の視線が二人へと向いた。
加地「どうした」
原「揉め事なんて珍しいですね」
気が強い者同士。ぶつかり合う事は珍しくないが揉め合うなんてそうありはしない。仕事に関する事なら致し方ない事もあるが話の内容からして完全にプライベートな問題だ。口出し出来る立場ではないが少し内容が気になって声を掛けてしまった。
未知子「城之内先生が知らない人と飲みに行けって言うの」
加地「全然分かんねぇよ」
ある意味。とても簡潔に述べてくれたのだろうが全くもって話が見えない。未知子の言う"知らない人"というのは面識があっても覚えていないという意味と面識がなく知らないという二つの意味があったりする。とはいえ彼女が認識しているのは極僅かだ。結局大半が"知らない人"の部類だなと一人で突っ込んでしまった。
博美「本城先生はご存知ですよね」
加地「そりゃまぁ」
原「正規の医局員ですからね」
未知子が居る時は必然的に博美が麻酔に入るので他の先生と組むことはあまりない。だが本来決まった相手と入るものではない。故に正規の先生達は顔馴染みだ。
加地「本城先生がどうしたんだよ」
博美「麻酔科医の飲み会があるから参加して欲しいって。それも凄いしつこく誘われたんです」
加地「それは災難だな」
他の科の人達とそう交流を持ったりはしないが病院には各病棟に看護師という噂好きの女達がいる。そんな彼女達の情報網は本当に恐ろしく院内の不祥事は勿論の事。恋愛においての情報にも強い。そしてそんな彼女達の中でも"本城"という名はとても有名だ。
博美「本当。迷惑です」
年齢の割には地位もありルックスも悪くはない。故に言い寄って来る女性も多くなかなか派手な遊びをしているらしいがそれに巻き込まれるなんて全くもって迷惑な話だ。
原「参加されるんですか?」
博美「了承するまで解放されなかったので仕方無く」
未知子「すっぽかせば良いじゃん」
博美「それは避けたいの。後々に響いてくるから」
医局員だった頃とは違い断るのは簡単に出来るが彼には地位がある。フリーランスは何にも縛られない気軽な立場である一方。危うい立場でもあるのだ。
博美「だからお願い。一緒に来て」
加地「行ってやれ。デーモン」
未知子「なんでよ」
加地「城之内が襲われたら後味悪いだろ」
未知子「なにそれ」
加地「そうゆうシャレにならない事をする男なんだよ」
ちょっと大袈裟な言い方ではあるが聞く限りでは強引な男。今のところ大きなトラブルがないのは彼の根回しの上手さと金で解決しているからだろう。実際病院を去った看護師も中には居ると聞いている。
未知子「なら尚更嫌。私が襲われるかも知れないでしょ」
加地「安心しろ。絶対ないから」
大門未知子という人物に出会って早数年。一緒に過ごした時間はそう長くないがとても濃い時間を過ごしてきた。今でも彼女の言動に手を妬くことはあるがそれ以上に良さも知っている。それが長い月日を経て築いてきた自分達なりの"絆"だ。だが本城にはそれがない。
未知子「なんで言い切れるのよ!」
加地「悪魔だからな。手なんか出せねぇだろ」
同じ病院に居るので向こうは未知子の顔を知っているかもしれないが"免疫"がない。外見の良さから興味を持つ可能性は無くはないだろうが簡単にどうこう出来る女ではないのだ。本城が自分のテクニックにどれほど自信を持っているかは知らないがそういう人こそ痛手を負う。大門未知子とはそういう女だ。
未知子「加地ちゃん最低ー」
加地「事実を言ったまでだ。だから安心して行ってこい」
原「やっぱり断った方が良いですよ」
いつもの調子で言い合っている二人を何とも言えない表情で見ていた博美に原はポツリと呟いた。
博美「私もそうしたいんですけど…」
未知子「そんなに心配ならきんちゃんが行けば?」
原「無茶ぶりはやめて下さい」
未知子「なんで?」
原「なんでって何ですか」
本城を知っているとはいえ親しい間柄ではないのだ。飛び入りで参加なんか出来る筈もなければ度胸もない。それに本城の目的は博美と二人きりになる事だ。飲み会なんて只の口実。聞いたところで了承なんてしないだろう。
未知子「城之内先生の知り合いも連れて行って良いって」
加地「どうゆう事だよ」
博美「参加する条件です」
一人は絶対に嫌だったので自分の知り合いを連れていく事を条件に参加を了承した。そしてその相手に選んだのが未知子だ。
加地「それを早く言え」
博美「えっ?」
加地「原。さっさと仕事片付けろ。俺達も参加するぞ」
博美「…どうゆう事ですか」
加地「俺達もお前の"知り合い"だからな」
ニヤリと笑う加地を見てその言葉の意味を理解した博美は安堵した表情を浮かべながらクスッと笑った。勿論。隣に居た原もそれを理解しので同じように頬を緩ませた。
加地「という訳だ。デーモン。お前も付き合え」
未知子「どうゆう訳よ」
加地「タダで飲み食い出来るんだ。来て損はないだろう」
誘った博美が二人分払うつもりでいたのだろうがこの際自分が払っても良い。理由はどうであれ彼女と飲みに行ける事が嬉しくもあったりするから。
未知子「それを早く言ってよ!」
あれ程嫌がっていたのに。たった一言で嘘のように機嫌を良くした未知子にみんな呆れながらも視線を合わせ笑い合った。
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