ドクターX(cp)短編

□ツンデレ同士
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未知子「ねぇ」

博美「なに」

未知子「言ってよ」

博美「何を」

未知子「好きって」

博美「なんで」

未知子「聞きたいから」

博美「何よそれ」

何をする訳でもなく座っていた博美に同じように何をする訳でもなく座っていた未知子が問い掛ける。互いに視線を向ける事なく言葉を掛け合っていたがふと博美は小さく笑った。

未知子「聞いた事ないなーって思って。城之内先生から好きって」

博美「私だって大門さんから好きって言われた事ないけど」

未知子「そうだっけ?」

博美「こういうのってタイミングの問題よね」

未知子「まぁ。それはあるよね」

一緒に居る時間は決して長くはないけれど今のように同じ職場に居る時は割りと同じ時間を共有している。だけどその大半が手術室だ。故にそんな言葉を交わす事はない。

博美「それよりどうしたの。急に」

未知子「別にー。ただ聞きたくなっただけ」

博美「相変わらず良く分からない人ね」

彼女と出会って早数年。大分その性格を理解してきたかと思っていたのに。どうやら思い違いをしていたようだ。

未知子「それは城之内先生も同じでしょ」

博美「そう?私は大門さんほど自由に生きてないわよ」

未知子「そうなの?」

ふと隣に居た博美に視線を向けるとその視線に気付いた博美も未知子へと視線を向けた。互いにその視線を逸らさずにいたら。どこからともなく声がして二人は同時にその声の方へと視線を移した。

加地「お前ら。ここをどこだと思ってるんだ」

未知子「どこって病院」

原「お二人とも完全に病院だって忘れてましたよね?」

博美「お疲れ様です。加地先生。原先生」

素っ気ない態度の未知子と当たり障りない笑顔を向ける博美。それは普段と何も変わらない二人の姿だがその雰囲気はいつもの二人ではない。あのまま放っていたら引き寄せられるように互いの唇がぶつかり合っていても不思議ではなかった。それほど二人は自分達の世界に入り込んでいたのだ。

未知子「ただ話してただけじゃん」

加地「無駄な色気を振り撒いて何が話してただけだ」

原「本当ですよ。その雰囲気に呑み込まれて仕事どころじゃ無かったんですから」

未知子「人のせいにしないでよね」

博美「良いじゃない。褒められてるんだし」

未知子「どこが?」

博美「色気があるって最高の褒め言葉だと思うけど」

相手が誰であろうとその言葉は女として認められている気がして嬉しい。例え余計な一言があったとしてもー。

未知子「私は全然嬉しくないんだけど」

加地「どうでも良いけど。続きするなら場所変えろ。迷惑だ」

友達以上恋人未満という言葉があるが今の二人を見ているて友達以上恋人以上。そんな風にも取れてしまう。恋人以上が何かと問われたら自分でも分からないが少なくても"友情"以上のものがそこにある。

原「そういうのは二人っきりで楽しんで下さい」

未知子「だから話してただけだって」

博美「そんなに仲良さそうに見えますか?」

原「見えますよ。違うんですか?」

女性というのは自分が思っている以上に難しく仲が良く見えてもそうじゃない事もあると知っている。だが今の二人は誰が見たって互いを想い合い特別な感情を抱いていると感じ取ってしまうだろう。特別な感情に関しては勝手な見解なので良いとしても。もしこの二人が"仲良くない"関係性だったとしたら女性不信になりそうだなと一人思ってしまった。

加地「ほら。時間だろ」

その言葉と共に時計へと視線を向けた未知子は立ち上がり白衣を脱ぎ捨てる。その横に居た博美は既に帰り仕度済みだ。少しフライングではあるが問題なく業務が終了した証拠。だからここで未知子が上がるのを待っていたのだろう。

「「時間なので失礼しまーす」」

無駄に色気が出ていた二人の面影なんて一切なく。いつも通りに医局を出ていった二人をその場に居た人達はただ見送る事しか出来なかった。






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