ドクターX(cp)短編

□ハプニング
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♪〜♪〜♪〜♪〜

加地「……ン」

聞き慣れた音が耳へと届き小さく身をよじるが瞳を開ける事が出来ない。その音が朝を知らせるアラームだと認識出来ているもののいつも以上に瞼が重く感じる。一体何故なのかと思いながら音がする方へと手を伸ばした。

未知子「ン……」

せっかく良い気持ちで寝ていたというのに。不意に届いた聞き慣れない音。何の音かは分からないが時期に鳴りやむだろうと暫く放っていた。だけど何故か一向に鳴りやまないので仕方無く音がする方へと手を伸ばした。

加地「…なんだ」

アラームを止めようとさ迷っていた手が不意に何かとぶつかってうっすらと目を開ける。ベッドの周辺にはやたらと物があるので何かしら手に当たっても不思議ではないが。その感触は明らかに物ではなく視線をそちらへと向けた。

未知子「…なに」

うるさいぐらいに響いているその音に若干苛立ちを感じていたのだが不意に何かが手に当たり恐る恐るそちらへと視線を向けた。

加地「………なッ!?」

未知子「………えッ!?」

視線の先にあったのは自分の手とは異なる手。何が何だか分からないままふと横を見ると向こうも自分を見ていてぶつかり合った視線。その瞬間互いに飛び起きた。

加地「デーモン!?」

未知子「加地ちゃん!?」

加地「何してんだよ!」

未知子「それはこっちの台詞よ!そもそもここ何処よ!」

加地「どこって俺ん家に決まって……」

紛れもなくここは自分の家のベッドの上。未だに鳴り響いている音は毎朝鳴るようにセットしてある携帯のアラームだ。動揺してしまい勢いに任せて言葉を発していたが徐々に落ち着きを取り戻しアラーム音を消しながら言葉を濁した。

未知子「…なに。どういう事よ」

知り合ってから数年経つとはいえ。時おり同じ病院で働くという程度の関係だ。ごく稀に飲みに行くというか奢って貰う事はあるが頻繁に連絡を取り合う仲という訳でもないのに。一体何があってこういう事態になっているのか。

加地「…なぁ」

未知子「なに」

加地「未遂………だよな?」

未知子「…私に聞かないでよ」

寝ていたので多少の乱れはあるものの衣服は身に纏っている。だが例えば万が一。そういう行為があったとしてもそのまま寝てしまうなんて事はない。事が終われば下着も衣服も身に付けるので何とも言えないのだ。

未知子「未遂かどうかなんて判断しようがないでしょ」

加地「いや…。ほら。なんだ。体の感じとかさ」

男である自分はそんな事ないが。事が終わった翌日は体に違和感が残っている事もあると。過去に抱いた女が言っていた。個人差はあるだろうが自分よりか女性側の意見の方が信憑性は高いだろう。そう思い彼女に視線を向けたのだが返ってきた返事は何ともまぁ彼女らしいもので。自分が求めていた答えではなかった。

未知子「そういう事があったとしても体に違和感とか出る訳ないでしょ。初めてじゃないんだから」

加地「…もう良い。重要なのはそこじゃないからな」

いや。全くもって良くはない。かなり重要なことではあるが互いに記憶がないのだから言い争っても話は進まない。今。大事なのは昨日何があったのかという事だ。

加地「昨日の事。どこまで覚えてるんだよ」

未知子「どこって…」

若干頭が痛いと感じているので多分飲みには行ったのだろう。あまり二日酔いになったりしないが今の状況からしてそこそこ飲んだ事だけは検討がつく。だがその経緯は良く分からない。普段通り仕事に行き定時でー。というところまで思い出したい未知子は突然彼の手を掴んだ。

加地「!」

未知子「いま何時!?」

加地「何だよ急に!」

未知子「仕事!」

記憶を辿っているときに出てきた"仕事"というワード。そのワードで現実へと引き戻されて彼が手にしていた携帯へと視線を落とすと彼も同じように携帯へと視線を落とした。

加地「ヤバい!遅刻するぞ!」

未知子「シャワー借りるよ!」

加地「おい!」

ここに来たのが初めてだとはいえ。バスルームの場所なんて聞かなくても検討ぐらいつくだろうがその後はどうするつもりなのか。衝動的に行動する彼女の事だから何も考えていなさそうだが後から文句を言われても困るのですぐに彼女の後を追った。

未知子「………」

加地「どうした」

何でも早い彼女の事だからもうバスルームに行ってしまったものだとばかり思っていたのに。寝室を出てすぐの場所で立ち止まっていた彼女は一点を見つめ動かない。そんな姿を見たら誰だってその言葉を口にするだろう。

未知子「…なんで着替えがあるの」

玄関のところに無造作に置かれていた自分の鞄。その鞄のそばには紙袋があったのだがその中には何故か着替えが入っていた。もう本当に訳が分からない。

加地「…シャワー浴びるなら早くしてこい。置いて行くぞ」

彼女と同じく色んな疑問が浮かんできたが今しなければいけない事は仕事に行く準備だ。互いに心中穏やかでないまま彼の車で病院へと向かった。






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