ドクターX(cp)短編

□小さな愛の物語(前)
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加地「そういえば」

未知子「なに」

加地「生理遅れてないか?」

疎ましかった存在の大門未知子と付き合い出してから一年と少し。出会った頃はそんな関係になるとは夢にも思っていなかったのに。彼女の師匠である神原晶の手術をキッカケに関係性が急展開した。普段強気の彼女が見せた弱さと優しさ。その見事なまでのギャップに心を奪われ玉砕覚悟で想いを伝えた結果が今の関係だ。

未知子「そうだっけ?」

何故自分の周期を知っているのかという疑問も浮かんだが頻繁に身体を重ね合わせていれば自然と把握してしまうのも不思議な話しではないと。目の前にある料理に手を伸ばしつつ彼へと視線を向けた。

加地「多少なら良いけどあんまり遅れるようなら検査に行けよ」

未知子「心配し過ぎ。生理不順なんて珍しい事じゃないよ」

加地「それでもだ。お前だって知ってるだろ。婦人科系の疾患は厄介だって」

男である自分には勉強したって理解出来ない部分も多々ある女性特有の病気。その症状は様々だろうが"生理不順"というのは病気のサインである可能性も高い。近年。婦人科系の疾患は増加傾向にあるだけに何かと心配だ。

加地「いい歳なんだから自分の体には気を使え」

未知子「加地ちゃんに言われたくない。それに人間ドッグなら毎年受けてるよ」

加地「一般的なものだろ。とりあえず放置だけはするな」

未知子「心配症なんだから」

加地「返事は」

未知子「もうー。分かったよ。様子見て検査に行ってくる」

初潮を迎えてから数十年。彼よりも当然それには詳しく自分の体の変化にも気を配っているので気にし過ぎだとは思うが"生理不順"になる時は体調が芳しくない時なのも事実だ。
職業的には仕方がない部分もあったりするが甘くみない方が良いというのも理解はしているので病院には行くと伝えると表情を和らげてくれた。

加地「話しは変わるけど。いつ戻ってくるんだよ」

相変わらず日本と海外を行ったり来たりで恋人同士になってからは同じ病院で勤務はしていない。それを少し残念に思ったりはしているが自分のマンションにも頻繁に来てくれているので不満もない。とはいえ一度行くとすぐには戻ってこないので複雑ではある。

未知子「二〜三週間後かな」

加地「帰ってくる前に連絡しろよ。行けたら車出すから」

未知子「はーい」

いつもと変わらず他愛ない会話を交わしながら夕飯を終え一緒の布団で眠りにつくと翌日彼女は海外へと飛び立った。





















未知子「無事に着いたよ」

予定通り二週間ちょっとで帰国した未知子は空港を出るなり一番に彼へと連絡を入れた。スーパードクターと呼ばれるだけあり何かと忙しいはずなのに合間を見て迎えに来てくれる事は珍しい事ではない。だが今回はタイミングが合わず来れなかったので電話での報告だ。

加地「悪いな。行けなくて」

未知子「気にし過ぎ。今からオペでしょ。失敗するなよ」

加地「しねぇよ」

未知子「それじゃあね。今日は報告も兼ねて紹介所に行くから」

加地「了解。また連絡する」

慌ただしく切られた電話に小さく笑いながら携帯わポケットへ終うとタクシーに乗り込み紹介所へと向かった。

未知子「ただいまー」

晶「おかえり。真っ直ぐ帰って来るとは思わなかったからご飯出来てないわよ」

未知子「えぇー!お腹空いてるのにー」

晶「今から準備するから待ってなさい」

海外と日本を行ったり来たりしているように日本に居る時は紹介所と彼のマンションを行ったり来たりしている。海外から戻って来た時はその足で彼の元へ向かう事が多いので今回もそうだとばかり思っていたのに。"今から帰る"と連絡が入ったのが数十分前の事。準備が間に合う訳もない。

未知子「ならちょっと出掛けてくる」

晶「居てもうるさいから助かるわ。一時間もあれば出来るから」

未知子「行ってきまーす」

キャリーバックを雀卓の横へと置いた未知子は鞄だけを持ち再び外へと出る。紹介所から少し離れた場所までやってきたところで足を止め携帯で何かを調べ始めた。

未知子「名医が居る婦人科は…」

海外に居る時に少量の出血はあったが生理と呼べるものではななく戻ったら検査へ行こうと思っていたところ。だがあまり受診をする機会がないのでどこの病院が良いのか分からない。晶に聞いても良かったがいちいち話すのが面倒だ。彼に聞けば良い病院を知っているだろうが今は手術中で連絡が取れないだろうと仕方無く自分で調べるという選択をしたのだ。

未知子「………どこでもいいや」

簡易的な調べ方しかしていないのが原因だろうが沢山の情報が上がってきて探す気が失せてしまった。検査だけならどこも大差はないだろうと結局一番近くの婦人科へと足を向けた。






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