ドクターX(cp)

□第3話 兆し
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加地「…なんだよ」

未知子「何も言ってないけど」

加地「でも見てるだろ」

未知子「見てるだけじゃん」

加地「何かあるから見てるんだろ」

時折視線を感じたり目が合ったりの程度なら気のせいだと流しているが彼女はどんな時でも欲望に忠実だ。コソコソするなんて事はなく一日中ずっと鋭い視線を向けてくる。大声で絡んでくるのも迷惑だが視線だけを向けられるというのも落ち着かなくて背を向けたまま彼女に声を掛けた

未知子「そうだけど。加地ちゃんには関係ない」

加地「…なんだよそれ。意味分かんねぇよ」

目的があってこちらを見ていると言いながら"関係がない"なんて本当に意味が分からない。誰でも良いから彼女の取り扱い説明書を作成して欲しいなんて事を考えていると横から割って入ってきたあの男。

原「最近、仲良いですね」

未知子「誰と誰が」

原「大門先生と加地先生ですよ」

未知子「は?」

原「今日だってずっと熱い視線送ってたじゃないですか」

熱い視線を送っていたというよりガンを飛ばしていたという方が正しい表現な気もするが二人が親しい関係性だと思っている今。軽い言い合いも仲睦まじく見えてしまう。

未知子「きんちゃん目悪くなった?切ってあげようか?」

加地「そりゃ良い案だな。切って貰え」

未知子「じゃあ早速検査に行こう♪」

暇をもて余していた訳ではないがこれ以上加地を見続けても自分が欲しい答えを得られない。まぁ答えが欲しくて見ていた訳ではないし今はそんな事より手術が出来る人が目の前に居るという事の方が自分にとっては大事だ

原「悪くないです!いや悪いけど!」

未知子「つべこべ言わない。ほら早く。きんちゃん」

原「きんちゃんじゃない!原守!」

立ち上がった彼女は一直線に自分の方へと歩み寄って来て身の危険を感じた原は一歩下がり身構える。だが何事も早い方が良いと思っている彼女は聞く耳を持たずで彼の腕を掴んだ

原「い"ゃぁー。やめてー。」

ふざけているのか本気で嫌がっているのか。掴まれた腕を振り払い医局内を逃げ回る原を追う大門。医局には他の先生もいるがまだ大門未知子という人物を理解してない彼らにそれを止めるという選択肢はない。一応、海老名の姿もあるが"仲良しだな"なんて呑気に呟くだけで本当に役に立たない人だ。

加地「うるさいんだよ!外でやれ!」

視線を向けられている理由が知りたかっただけなのに何故こんな事になっているのか。立ち上がった加地は手を伸ばすと自分のデスクの近くを通った大門の腕を引いた。

未知子「あぁー。セクハラ!」

加地「どこがだよ!」

逃げ回る原を擁護しても何の意味もない。大門の方を止めなければ今の状況は変わらないと思ったから彼女の腕を引いたに過ぎないのに。聞き捨てならない発言だ。

加地「やる事がないなら帰れよ!」

就業時刻まで残り数分あるがここで暴れられるぐらいならフライングでも良いから早く帰って欲しい。それが医局が平和になる一番の策だから。

未知子「やる事ならあるよ。きんちゃんの検査」

原「だから悪くないです!」

大門にいくら言っても無駄な事。ならば原の方が軽く聞き流すしかないのに再び食って掛かる原に文句の一つでも言うとした時。医局のドアが開き皆の視線がそちらへと向いた

ーガチャー

博美「大門さん。帰…って何事」

見るからに揉めている状況にここは保育園かと言いたくなったが余計な発言はトラブルの元。喉まで出なかった言葉を飲み込むと当たり障りない言葉を掛けた。

未知子「きんちゃんの…」

加地「城之内。早くこの悪魔を連れて帰れ」

何か話そうとした大門にわざと言葉を被せてきた加地へと視線を向けた城之内はその瞳を見て何かを察するとスッーと彼女の元へと歩み寄る。加地が掴んでいた方と反対側の腕に自分の腕を絡めると大門を見てニコリと微笑んだ

博美「牛丼食べに行こう。奢ってあげるから」

未知子「マジでー。行く行く!」

両手を挙げ最大限に喜びを表現する彼女は白衣を脱ぎ捨てると直ぐに手荷物を取りにロッカールームへと消えた。

未知子「早く早く」

博美「はいはい」

白衣を着ている時とは違い嬉しそうな彼女は小さな子供のようで何だか可愛らしい。大門に腕を引かれながら軽く後ろを振り返ると片手を挙げ申し訳なさそうな表情をしている加地と視線がぶつかったので小さく微笑んだ彼女は背を向けたまま手を振りその場を後にした







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