ドクターX(cp)短編

□王様ゲーム2
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未知子「遅ーい」

博美「加地先生。これはどういう事ですか?」

待ち合わせ時刻を少し過ぎてから姿を現した二人の後ろに見える沢山の人影。知った顔触れもいるので病院関係者だとはすぐに分かったが一体どういう事なのだろうか。

加地「悪い。思った以上に集まってくれてな」

参加人数が多ければ多い程。こちらとしては都合が良い。だから片っ端から声を掛けてみたら思いの外。集まってくれて。全員が終るのを待っていたら少しばかり遅くなってしまった。

原「遅れてしまってすみません。見知った顔が多い方が安心出来るかと思いまして」

博美「いえ。本当。ありがとうございます」

本城の企みは最初から分かりきっていたから未知子を同伴者として選んだ。例え強引に迫られたとしても彼女が居ればそれを回避出来ると思ったから。だが未知子だって女だ。力付くで襲われたら勝てはしない。そういう不安も少なからずあったのに。彼らを見たらそんな不安は一気に吹き飛んでフワリと微笑んだ。

未知子「早く入ろうよ。お腹ペコペコなんだけど」

加地「本当。切る事と食べる事しか頭にないな」

店の中へと入っていった未知子の後ろ姿を見ながら呆れる加地だがその表情はどこか穏やかで。原と博美は顔を見合せながら笑い合うと二人に続き中へと入って行った。

博美「本城先生。遅くなってすみません」

受付で名を伝えたら通された座敷の部屋。靴を脱ぎふすまを少しだけ開けた状態で声を掛けると既に一杯していたのか。上機嫌で近付いてきた。

本城「遅いから心配して……!」

やっと来た意中の女性。早く手を出したい衝動を押さえ先ずは中へと通そうとふすまを引いた本城は絶句した。彼女の後ろに居た人物達にもその人数にも。

本城「えっと…。これは…?」

博美「知り合いも連れて来て良いと仰って下さったのでお言葉に甘えて」

未知子「ちょっと。早く通してよ」

本城「…君は?」

後ろに居るメンバーに気を取られていた事と居酒屋独特の照明の影響で声がするまで気付かなかったが初めて見る顔だ。それもかなりの上玉に思わず全身を舐め回すように凝視する。未知子の格好を見れば誰だってそうなるだろうが。その視線は嫌悪感を抱かせるもので何も言わず睨み付けた。

加地「久しぶりですね。相変わらずのようで何よりです」

本城「加地先生。それはどういう意味ですか」

加地「深い意味はありませんよ」

原「こんばんは。本城先生。お邪魔させて貰いますね」

予想通りとでも言うべきか。普段から引き連れている部下二人が居るだけの部屋。きっと頃合いを見計らい二人は消え去る算段だったのが見え見えだ。

本城「…あぁ」

迎え入れたくはないが病院関係者に雑な扱いは出来ない。自分より地位が下ならまだしも何故か教授や准教授。部長といったそうそうたるメンバーも中に居る。科は違えど断れる筈もないのだ。勿論。それは全て加地が仕組んだ事だったりする。あからさまに不機嫌な本城を他所に飲み会は始まった。

























未知子「何アイツ。本当。気持ち悪いんだけど!」

博美「でしょ!あれが毎日よ。もう本当。無理なんだけど」

隙あれば近くに寄ってきて無駄な会話を強いられる。そんな本城から事情を知っている三人が助けてくれたり。飲み会中に親しくなった人達が助け船を出してくれたりと。上手く交わしてきたが本当に鬱陶しい。

未知子「早く何とかして」

原「僕に言われても困ります」

未知子「何の為に来たの?酔い潰すとかぐらいしてよ」

原「無茶振りはやめて下さい。絶対向こうの方が強いですから僕には無理です」

加地「方法ならあるけどな」

博美「えっ?」

未知子「なら早く実行して」

加地「ここに居る全員に被害が出る方法なんだよ。それでもするか?」

未知子「意味分かんないんだけど」

酔わすのが目的なので確実に被害者は出るだろう。酔った勢いで羽目を外す人だって居るだろうしそういう意味では被害を被る人もいるだろうが"全員"とはどうゆう事のだろうか。

原「まさか…。あれをするつもりですか?」

加地「あぁ。そのまさかだ」

博美「何ですか。あれって」

原「王様ゲームですよ」

未知子「なにそれ」

博美「くじで王様を決めてその指示に従うってゲームよ。私はした事ないけど」

加地「合コンでするゲームみたいなものだからな」

男ばかりの飲み会では盛り上がりに欠けるのであまりしないが男女混合の飲み会やキャバクラなどでは今でも時おり見掛けるゲームだ。説明するより見せた方が早いと箸袋を集め数字と王のマークを書き込んでいると平然と言い放たれた言葉に背筋が凍り付いた。





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