ブレイム・ヒーローズ

□呼び声ーー怪獣ーー
2ページ/10ページ

 5年の月日が経ち、現在2000年。奴の恐怖からはまだ日本は抜け出せずにいる。そして奴に対しての憎しみは被害にあった者達皆共通だ。
――俺もその一人だ。
―君は?
―俺はトオル、比奈塚トオル。
―何を奴に奪われた?
―…尊敬していた人。
―それは可哀相に。奴を憎むだけで満足かい?
―そんな訳ない。そんな事ある訳ない。アイツはただの危険な動物。そんな奴に情けなんて掛ける必要なんてない。俺に力があれば、他の人達の為にも奴を‥殺してやりたい。




―――あれ?今俺は誰かと話していたんじゃ…。横目を動かすとカーテンの隙間から太陽の日差しが眩しい。それに自分は今ベッドの上、…夢だったのか。でもそんな実感なかったな、そんなのが夢なのかも知れないけど。そんな自問自答みたいな事してる場合じゃないや、また学校行かなきゃ。21世紀になっても俺のやることは変わらない。何も…。


少年は寝ぼけ眼でベッドから降りる。寝起きが悪く、まだ眠たそうな顔をしている。着替えて部屋を出て一階リビングへと無気力な足取りで向かう。大抵の家庭なら朝は家族全員が集まり朝食を取ったりするだろう。しかし彼の目には誰一人居ないリビングが映る。それを彼は慣れているようで見過ごす。
キッチンの冷蔵庫へ向かい牛乳を取り出しパックから直接口へ運ぶ。ある程度飲んだ後、冷蔵庫へ戻しリビングのソファへ座りTVの電源を入れる。たまたまニュースをやっていた。殺人、強盗、テロ、何処に局を回してもそんな報道ばかりだ。少年はそれらを飽き飽きした目で見通し、電源を消す。目の前のガラス机には封筒が一つ置いてある。封筒を掴みバッグへしまい玄関へ歩き出す。今着ている服は学生服、どう考えても行き先は学校しかない。
眩しい晴天の下で少年は暗い雰囲気で登校する。その時近所に住んでいるおばさん達の井戸端会議の横を通り過ぎる。

「あ、トオル君おはよ。」

少年は軽く頭を下げ無愛想な感じでその件を後にする。井戸端会議はすぐに少年の話題に切り替わったらしく、冷たい目で見ながら話を繰り広げる。少年はそれをも慣れている様子だ。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ