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□好きだと言って
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「なーなー、あゆみちゃん」
「………」
「なーあ」
「………」
「あゆみちゃーん」
「もう!何!?」
「相手して欲しいナリ」
「仁王くん!勉強!」

俺は今、絶賛放置プレイ中だ。放課後の喧騒の中、俺たちはテスト前の勉強を熱心にしている。(あゆみちゃんだけじゃけど)同じクラスで隣が席のあゆみちゃんに恋して早一ヶ月。なかなか進展しなくて焦れた俺は、一緒にテスト勉強をしようと誘ってみた。ひとつの机に向かい合って座っている俺たちは、周りからどう見えているのだろうか。

「勉強ばっかりじゃつまらんじゃろ」
「仁王くんが勉強しよって言ったんじゃん」
「…そうじゃけど…」

つまらん。下心があって誘った俺にしては、ただ勉強するだけなのはつまらん!

「あゆみちゃんって好きなやつとかおる?」
「えっ!な、なに?急に…」
「気になったけぇ聞いてみた。おるん?」
「わっわたしは別に…」

この反応は…おるんじゃな! あゆみちゃんに好かれるなんて羨ましい。

「誰?」
「っ!な、内緒!」

顔を少し赤らめてそう言った彼女は俯いた。そんな彼女を見ると、誰だか分からない、あゆみちゃんが想いを寄せている男に嫉妬してしまう。もやもやする胸の中は、喉まで上がってきて苦しさを増す。あー、俺のこと好きだったらいいのに…

「え?」

ぱっと顔を上げたあゆみちゃんは、目を丸くして驚いた表情で俺を見た。

「…俺、声に出とった?」
「……うん」

大失態だ。かっこ悪すぎる。自分の間抜けさにため息が出た。ちらっとあゆみちゃんを見ると頬を赤らめてまた俯いていた。

「仁王くん…わたしも仁王くんのこと…」
「…俺のことが何?」

まさか、俺のこと好きとか!?どきどきと心臓が大きくなっていく。赤い顔で俯いて何も言わないあゆみちゃんが可愛くて、むらむらした。(俺だってむらむらくらいするぜよ)

「仁王くん…」

赤い顔でそう呟いたあゆみちゃんはすごく恥ずかしそうで、その表情にその声に欲情した。ぷつりと俺の中で何かが切れた音がして、がたりとイスを立つと机に乗り出して彼女の耳元に唇を寄せた。

「ひゃっ、にお…くん?」
「俺のこと好き?」

わざと息が耳に当たるように喋ると、びくりとあゆみちゃんの体が揺れる。

「好き?」
「や、やめてっ…」

俺の胸元を力のない腕で押し返し、抵抗になっていない抵抗をするあゆみちゃんに、余計に俺の感情が揺すぶられる。耳の形に沿って舌を滑らせ耳たぶを甘噛みすれば、甘い吐息があゆみちゃんの唇から漏れる。

「俺のこと好きって言えよ」

吐息混じりにそう囁き、耳たぶをちゅるりと吸ってみる。すると、胸元に置かれていたあゆみちゃんの手が、俺の制服のシャツをぎゅっと掴んだ。

「に、おくんのこと…好き…」

あゆみちゃんがそう言った瞬間、後頭部を掴んで俺の唇にあゆみちゃんのを押し付けた。咄嗟のことで目を丸くするあゆみちゃんが可愛くて、乱暴になってしまう。唇の隙間から二人の吐息が混じりあって、激しくなっていくそれにあゆみちゃんの声が漏れる。唇を離すと潤んだ瞳が俺を見つめた。

「俺のほうが好きじゃ」

揺れる瞳で見つめれた俺は、濡れた唇に噛み付くようにキスをした。



2014.09.28

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