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□大切にしたい獣
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俺には、あゆみという一つ年下の可愛い彼女がおる。何が可愛いって全てが俺のツボで、彼女のためなら何でもしてやりたい。
「にお、せんぱっ…自分で出来るよっ」
「俺がやるんじゃ。あゆみは大人しくしとき?」
「だって…くすぐったい」
今夜は誰もいない俺の家で、料理をしてくれると彼女は言い出した。そんな今、あゆみの髪を一つに束ねている最中だ。
「ほれ、出来た」
「ありがと」
振り向いてにっこり笑ったあゆみが可愛くて照れる…
「ええよ。ほら、後ろ向いて。エプロンせんと…」
「これも自分で出来るよ」
くすくす笑っているあゆみにエプロンを付ける。うしろでリボン結びをするとき、ふと目に入ったのは、後れ毛のあるうなじ。やけに色っぽく見えて、気がついたときは自分の唇があゆみのうなじに触れていた。
「ひゃっ!にっ仁王先輩っ!」
「じっとしとかんと結べんじゃろ」
「だ、だって…」
困った顔もかわええのう…耳まで赤くして、俺の言う通りにじっとしているあゆみに悪戯心がくすぐられる。ちゅっちゅっとリップ音を立てながらうなじから肩にかけてキスを繰り返す。あゆみの体がビクビクする度に、興奮が増していく自分がいた。こんな可愛い反応されたら我慢できんなるじゃろ…
「にお、せんぱ…い…」
くるりと俺のほうを向いたあゆみに喉が鳴った。耳まで赤くなった顔にうるうるしている瞳、唇から漏れる吐息は悩ましげで俺の理性を崩していくには充分過ぎる。でも、ここで無茶苦茶にしたらあゆみが嫌がるかもしれん。俺は、あゆみを大事にしたい。理性を保つために深呼吸して、あゆみの頬にキスをした。
「おいで」
あゆみを抱きしめた。今はこれで我慢じゃ。あゆみの香りに引っ込みかけた欲望が覗いたが、彼女の腰に手を回してエプロンの紐を結んだ。
「じゃあ、仁王先輩はあっちで待ってて」
「俺はここで見とるけ、気にせんでええよ」
あゆみが危なくないように見とかんとな。
「うん、じゃあ見てて」
かわええのう。にっこり笑うあゆみにメロメロじゃ。って…
「ちょ、待ちんしゃい!」
「何?」
「包丁は持たんでええ!俺がやる!」
「大丈夫だよー!」
「ダメじゃ!怪我でもしたら危ないけぇ!」
包丁を取り上げるとあゆみは不満気に俺を見た。そんな顔もかわええ…
「これじゃあ何にも出来ないよ!仁王先輩にわたしの手料理、食べてもらいたいのに…」
「あゆみ…」
か、可愛すぎっ!俺の理性が爆発しそうじゃ…
「わかった…」
「やったー!」
鼻歌を歌いながら包丁を扱うあゆみを後ろからハラハラしながら見守った。俺のためにあゆみが頑張ってくれてる…そう考えただけでお腹いっぱいじゃ。
「っ!」
びくっと揺れた肩に、自分でも驚くほど素早く反応した俺の体は、あゆみの指を掴んでいた。指先からは血が滲んでいて、あゆみを見れば眉尻を下げてそれを見ている。
「ほら、だから言ったじゃろ」
「だって…」
落ち込んだ様子のあゆみにため息をついて、とりあえず応急処置。口にその指を含めば、突然の行為にあゆみの体がびくっとなった。
「に、にお…せんぱ、い…」
傷口を舌で優しく舐めると、恥ずかしそうに目をぎゅっと瞑るあゆみに俺の欲望が疼く。かわええのう。その顔、悪戯心が擽られるぜよ。指から唇を離すと、潤んだ瞳が俺を捉える。赤く染まった頬を撫でるとあゆみは体を震わせた。だんだんと近付く二人の距離は数センチ。俺の理性はとっくに欲望へと変わっていた。悪戯心?そんな可愛いもんじゃない。もっとドス黒い何か別のもの。大切にしたい。でも、あゆみが可愛くて我慢できない。
「めちゃくちゃにしてもええ?」
「えっ…あ、あの…」
戸惑うあゆみの唇に噛み付くようなキスをした。だんだん激しくなるそれにあゆみは必死に応えようとしてくれていて、それがまた堪らなく愛おしい。
「ホンマにかわええのう」
「恥ずかし…」
止まらないキスが余裕なくて、自分でもびっくりする。大切にしたい、なんて綺麗事。理性も効かない獣のような男だと自分を嘲笑した。ああ、明日からは柳生を見習って紳士にもっと大切にあゆみを扱おう。でも、熱く甘い吐息が俺の唇にかかるたびに、決心が薄れていく。荒々しくあゆみを貪る俺には、紳士なんて無理じゃろう。あゆみの艶めかしい声がくせになりそうじゃ。
2015.03.21