みじかいゆめ

□甘く溶ける
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それは、ある日の休日。

「ねぇ、ブンちゃん」

彼女とのんびり家デートを楽しんでいたところだった。

「何?」

ゆきは、読んでいた雑誌からぱっと顔をあげるとわくわくした様子で俺を見ていた。

「ブンちゃんが初めてキスしたのっていつ?どんな感じだった?」

何を言い出すのかと思いきや…ゆきの手元の雑誌を見てみると初キス特集とか書かれた記事があった。

「どーでもいいだろい」
「よくなーい!だって、ブンちゃんキス上手だし…どんなことしてきたか知りたいんだもん」
「お前なぁ…」
「あっ!じゃあ、わたしのことも教えてあげるから!情報交換ね」
「は?」

ちょっと待て。まさか、ゆきの初めては俺じゃなかったってことか!?(あっちの方は初めてだったから、キスも初めてかと思ってたぜ) それじゃあ、キスの合間に漏れるあの吐息もキスの終わった後のあの顔も他の奴も見てるってことか?あー、考えてたら気が狂いそう。何が「情報交換ね」だ。そんなもん交換したくもねーし、教えていらねーし。

「あのね、わたしの初めては」

聞きたくもない話を聞かされないように、ゆきの唇を俺のそれで塞いだ。啄むようにキスをするだけでゆきの目はとろーんとなって俺に体を委ね、舌を入れるとぴくりと体が反応し、もっとと言わんばかりに俺の首に手を回し求めてくる。こんなこと、他の奴にもしてたのかと思うといつもより乱暴になってしまう。

「んぁ…ブンちゃ…」

はあはあと唇の隙間から漏れる吐息も全てのみ込みたくなる。唇を離すと紅潮した頬に濡れた唇、とろんとした瞳。こんな顔させるのは、俺だけだと思いたい。

「ゆきの隣に俺がいない昔の話なんて、聞きたくねぇ」
「ぇ、それって…やきもち、んっ」

またキスをして何も言えなくしてやる。舌と舌が絡み合い、飲みきれない二人分の唾液が口の端から垂れていき、それを舐め取り、柔らかい唇をまた貪る。癖になるようなゆきの唇は、これから先もずっと俺だけのものだ。誰にも渡さないし、離さない。服の下に忍び込む手に体をびくんと跳ねさせ、これから始まる行為に期待し目を閉じるゆきは可愛くて仕方ない。


2013.04.22

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