みじかいゆめ
□雨の音
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ザアザアと雨の音が静かな部屋の中で煩く聞こえ、雨の音にも負けない程の自分の心臓の音を聞きながらわたしは仁王の家にいた。それは、デートの途中に雨が降ってきた事から始まった。
「俺ん家近いけぇ」
そう言って引っ張られ連れてこられた仁王の家は本当に近かった。家の中に入ると風邪をひいてはいけないとシャワーを貸してくれた。そして、今は仁王がシャワーを浴びている。ガチャリとドアの開く音にびくっと体が跳ねる。
「寒うないか?」
「うん…大丈夫…、ってか服着てよ!」
部屋に入ってきた仁王は上半身裸で鍛えられたその体を見れば、さっきよりドキドキが煩くて自分の心臓の音に耳を塞ぎたくなる。そんなわたしのことはお構いなしに、仁王はニヤニヤしながら近づいてくる。
「そんな顔赤くして、なに想像しとん?」
恥ずかしくて後ずさるがすぐに背中が壁につき、顔の両脇に手をつかれ閉じ込められる。
「何も想像してない!早く服着てよ!」
口元のホクロがやけに色っぽくて、困る。
「ゆき、いやらしいのう。俺のシャツ一枚で太もも丸見えじゃ」
「あんまり見ないで!」
おでことおでこが当たりそうで、仁王が近すぎてクラクラする。さっと仁王の手をどかし、その腕から逃れると何となく距離をとり赤いであろう顔を隠すために俯いた。
「は、早く雨止むといいねっ!」
何か話してないと落ち着かないわたしと、そんなわたしを見てニヤニヤしている仁王。
「俺はずっと止まんでもええんじゃけどなぁ」
顔を上げれば仁王の綺麗な顔が目の前にあって、少し治まっていたのにまた顔に熱が集まるのが分かった。ドキドキして心臓が壊れそうで、どうすればいいのか分からなくて強く目を閉じた。
「ぷっ…」
そう吹き出し笑い出す仁王にわたしは、からかわれたとすぐに気付いた。
「酷い!からかったのね!」
「すまん、すまん。余りにも緊張しとったけ」
「も、もう!仁王なんて知らない!」
自分だけがドキドキしていたのかと思うと恥ずかしくて、「帰る」と立ち上がれば「そんな格好じゃ帰れんじゃろ」と腕を掴まれた。
「ゆきが可愛いから意地悪してしまうんよ。許してくれんか?」
そう言ってわたしを抱きしめる仁王は温かい。目を合わせればゆっくりと仁王の顔が近づき唇が重なる。仁王の手は、わたしの体を滑るように下に降り太ももを円を描くように撫でた。
「に、お…ひぁっ…まって!」
「待てんよ。ゆきが可愛くて我慢できんからのう」
そう言って仁王は目を細め妖しく口を歪めて笑い、わたしに噛み付くようにキスをした。外はザアザアと雨が鳴く。
2013.04.23