みじかいゆめ

□放課後の教室で
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放課後、誰もいない教室で「英語教えてくださいよ」と頼んできた後輩の赤也と二人きり。窓の外では、部活や下校中の生徒の声。

「ゆき先輩、これであってる?」
「うん、すごい!あってるよ!」

そう言うと「へへっ」と笑う赤也が可愛くて、こっちまで笑が溢れる。赤也の笑った顔が大好き。

「何笑ってんスか?」

きょとんとした顔でわたしを見る赤也に「べつに」と言うと、怪しいと言わんばかりの顔をした。

「ほら、次の問題!早くしないと日が暮れちゃうよ」

笑ってそう言うと、赤也はちぇっと舌打ちをして問題に目を向けた。少し経って、「わっかんねぇ…」と言う言葉と溜息が聞こえた。

「なーんかやる気でないんスよねぇ」
「そんなこと言わないの!」

何か考えことをしているのか、問題を解こうとしているのか分からないが腕を組み「うーん」と唸っている。すると、突然はっとした表情を見せた赤也は目をきらきらさせてわたしを見た。

「ゆき先輩、ご褒美くださいよ!」

何を言うのかと思えば…確かにご褒美があればやる気も出るが、わたしが持っているのはポケットの中にある飴が一つだけ。

「ご褒美って何?飴くらいしか持ってないよ?」

そう言うと今までの可愛い表情が嘘のように妖しい表情へと変わり、口を歪めて笑う赤也になぜかわたしの心臓はとくとく、と速度を速めた。

「ゆき先輩」
「ぇ?」
「ご褒美はゆき先輩がいいっス」

カタン、と椅子から立ち上がると私の両脇にあった机に手をつき、その中に閉じ込められた。

「あか、や?」

どくんどくんと頭に響く自分の心臓の音におかしくなりそうで、じっと見つめてくる赤也から目が逸らせないでいた。

「ゆき先輩って、鈍いっスよねぇ。俺がアピールしてんのに全然気付いてくんねぇの」

頬に赤也の手が添えられて、愛おしいと言われているかのように優しく撫でられる。

「好きっス」

だんだん赤也の顔が近づいてきて、ドキドキして恥ずかしい。

「ちょ、待って!」
「顔赤くして可愛いっスね。俺、ゆき先輩のこと大事にしますから…」

まるで壊れ物を扱うような優しいキスをされ、抱き締められると心が満たされたように温かくなる。多分、わたしも赤也のことが好き。

「もう一回キスしていいっスか?」
「…うん」

頷くと嬉しそうに笑う赤也。傾いた顔がゆっくりと近づき、わたしの唇に噛みつく。

「ふぅ…んっ…あか、や…」
「ゆき先輩かーわいっ」

二回目のキスは息が出来ない程の激しく、わたしを食べてしまいそうなそんなキスだった。


2013.04.24

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