みじかいゆめ

□おはよう
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ガチャと部屋のドアを開けば、幼馴染みでもありわたしの片想いの相手でもあるブンちゃんが寝ている。勝手に決めた毎朝ブンちゃんを起こすという日課は、わたしにとっての楽しみである。

「ブンちゃん」

ゆっくりとベッドに近付き、まだ寝ているブンちゃんを見る。サラサラの赤い髪、綺麗な肌、長めの睫毛、少し開いた唇に男の人なのに感じるこの色気。この男からは、たっぷりのフェロモンが放出されているに違いない。(だって見てるだけで何かこう言葉では表せない変な気分になる) いくら見てても飽きなくて、まじまじと見てたらぱちっと目が開いた。

「ゆき、じろじろ見てんじゃねーよ」
「ブンちゃん、おはよ。起きた?」
「んー、起きてない」

そう言ってまた布団をかぶるブンちゃんに、起きてるじゃんと思いながら布団を剥ぎ取ると不機嫌そうにブンちゃんがわたしを見た。

「早く起きないと朝練に遅れちゃうよ!真田くんに怒られても知らないんだから」
「後五分くらい大丈夫だろい」

布団を剥ぎ取られてもまだ寝ようとするブンちゃんの体を揺すって、わたしも寝かすまいと応戦する。

「間に合わなくなっちゃうよ!ブンちゃーん、おーきーてー!」

揺するためにブンちゃんの体に置いてた手をぐいっと引っ張られ、わたしの上半身がブンちゃんの体の上に乗っている状態になってしまった。一瞬の出来事で、何がなんだか分からなくてブンちゃんの顔は近いしで顔が一気に熱くなった。

「うるせーよ、ゆき…」

耳元で名前を呼ばれ、体が熱くなる。ぎゅっと抱き締められて、ジタバタしても離してくれない。ブンちゃんを見ると意地悪い笑を浮かべて、わたしの反応を楽しんでいるように感じた。

「ブンちゃん!離して!」
「やーだ。だって、お前うるさいもん」

逃れようと突っ張るけど、男の人の力に敵う訳なくて、余計強く抱きしめられてわたしの心臓は爆発寸前で息苦しい。

「お願いだから離して!」
「あーもう、黙れよ」

ぎゅーっと抱き締められていた力が急に弱まったと思ったら、目の前いっぱいにブンちゃんの顔が広がった。唇が熱い。ゆっくりと離れるブンちゃんの唇に状況が把握できないわたしの頭。

「大人しくなったな」

また強く抱き締められ、ブンちゃんの匂いに包まれると動き出すわたしの思考は、はてなマークでいっぱいになった。

「ぶ、ぶんちゃん?」
「なあ、このまま遅刻しねぇ?」

わたしの脳みそはショート寸前で、妖しく笑うブンちゃんはまたわたしにキスをした。

「男の部屋に来て何もないって思うなよ。俺をこうさせてるのもゆきのせいだかんな」

「好きだ」と言う言葉と共に反転する視界に、息を飲んだ。


2013.04.27

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