みじかいゆめ
□大嫌い、大好き
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わたしには大っ嫌いな奴がいる。
「丸井くーん」
それは、隣の席の丸井ブン太。
「サンキューなっ」
いろんな女の子が休み時間になったら丸井くんのところにお菓子を持ってくる。女の子に囲まれちゃってニコニコしてる丸井くんを見ると、誰にでもいい顔しててイライラする。
「ゆき」
話かけて来たのは、たまに話す仁王くん。
「眉間に皺よっとるよ」
「ちょっとね…」
「丸井モテモテじゃのぅ」
クツクツ笑う仁王くんの言う通り、あいつはモテる。(仁王くんも十分モテると思うけど) 女の子たちはみんな可愛くて綺麗な子ばっかりで、丸井くんは女の子大好きに決まってる。丸井くん、丸井くんって煩い。予鈴のチャイムが鳴ってみんな自分の教室や席に帰っていく中、わたしはイライラする気持ちが抑え切れず席を立った。次の授業はサボっちゃお…そう思い廊下を出ると後ろから誰か着いて来る。
「おい、どこ行くんだよい。もう授業始まるぜ」
ぷうっとガムを膨らませ、わたしの後を着いて来るのは大嫌いなあいつ。
「無視すんなよ」
「丸井くんには関係ないでしょ」
歩く速度を少し速めると、それに合わせてあいつも足を速める。ぱちんと、膨らませたガムが割れる音がした。
「俺、教科書忘れてゆきに見せてもらわねぇとだから、いないと困るんだけど」
「馴れ馴れしく呼び捨てしないでよ。あと、教科書は貸してあげるからもう着いて来ないで」
小走りで屋上への階段を登ると、勢いよくドアを開けた。
「ちょっと待てよ!」
「しつこい!」
わたしに伸ばされた手を払うと、悲しそうに俯く丸井くんにズキンと胸が痛む。
「何でだよ…何で仁王とは普通に話せて、俺とは普通に話してくれねぇんだよ!」
丸井くんは、わたしの腕を掴んで真剣な顔して見てくる。
「分かんない!丸井くん見てるとイライラするの!」
「何だよ、それ…」
ぐいっと引っ張られ、気が付けば丸井くんの腕の中で甘い香りでいっぱいになった。
「俺は、ゆきが好きなんだよ!」
丸井くんがわたしを好き?
「嘘っ!だって丸井くんは、いっつも可愛い女の子に囲まれててわたしなんかっ」
急に丸井くんで目の前がいっぱいになって、唇は熱くてグリーンアップルの味。
「好きだ」
「丸井くん…」
何でこんなに嬉しいんだろ…わたし、丸井くんの事嫌いなはずなのに、抱きしめられて好きって言われてキスされて喜んでる。だって周りには可愛い子が沢山いるのに、手作りのお菓子に可愛いラッピングしていっぱい丸井くんのところに来るのに…勝手にイライラして…もしかして、わたしその子たちに嫉妬してた?丸井くんが嬉しそうに女の子たちからお菓子貰ってたから…妬きもちやいてたんだ。
「ゆきは、俺の事嫌いなの?」
「わたしは…」
せっかくこの想いに気付いて、丸井くんもわたしのこと好きって言ってくれてる。素直にならないと…
「わ、わたし、丸井くんが他の女の子と仲良くする事に嫉妬してた!わたしも丸井くんが好き!」
一瞬目を大きくして優しく微笑むと丸井くんは、ぎゅうっとわたしを強く抱き締めた。
「すっげぇ嬉しい」
「丸井く、んっ」
唇に唇が重なって、ゆっくり離れる。
「ブン太って呼んで」
「ブン、太」
「よく出来ました」
また唇を奪われて、啄むようにようなキスに体が震える。ゆっくりと唇の割れ目から舌が入ってきて、わたしのを絡め取り口内を掻き乱され、口の端からは飲みきれない二人分の唾液が顎を伝う。
「んっ…ぶん…たぁ…」
溢れた唾液をぺろりとブン太が舐め取り、満足そうな表情でわたしを見つめる。
「ずっとこうしたいって思ってた。もう我慢なんてしねぇから覚悟しろい」
赤くなるわたしにブン太は悪戯っぽく笑った。
2013.05.02