みじかいゆめ

□生意気な彼氏
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ふぅと溜め息混じりに息をついて、今日も疲れたなぁなんて思いながら湯船に浸かる。今晩は、親が旅行に行ってて明日まで帰ってこないから一人でお留守番。何食べようかと考えていると、玄関が開く音がして誰かが廊下をドタドタ走る音が聞こえた。もしかして、泥棒じゃないよね?そう考えていると、脱衣所のドアが開き次にお風呂のドアが開けられた。

「ゆき、ここにいたのかよ。探したじゃん」

それは、隣に住む一つ年下の幼馴染みでもあり、恋人でもある赤也だった。

「あ、赤也!出てってよ!」

咄嗟に自分の体を赤也に見えないように抱え込むと、赤也は眉間に皺を寄せわたしの腕を掴んだ。

「何?今更恥ずかしがることねーじゃん。ゆきの全部見てんのに」

赤也の行動と言葉に恥ずかしさが込み上げて来て顔が熱い。(のぼせそう…)

「いいから出てって!」

近くにあった洗面器を赤也に投げ付けると、「いてっ」と言う声が聞こえた。

「分かった、分かった。ゆきの部屋で待ってっから」

そう言うと赤也は、頭をさすりながら渋々脱衣所から出て行った。ドキドキする心を深呼吸で落ち着かせ、もう少し体を温もらせたかったなと思いながら湯船から出た。
――服を着て二階にあがると、わたしのベッドの上で雑誌を読みながらくつろぐ赤也がいた。

「何よ、急に来て」
「何、怒ってんだよ。おばさんから今日はゆきが一人だから様子見てくれって頼まれてたんだよ」
「一人で大丈夫だよ」
「だめだめ。ゆきに何かあったら俺が怒られんじゃん。それにゆきは抜けてるとこあるし」
「そんな事ないもん!」

ばさっと雑誌を投げる様に置いた赤也は、ゆっくりわたしに近づいて来た。いつもと違う雰囲気が漂う赤也に、反射的に体が後ずさるがすぐに背中に壁がつき、赤也が目の前に迫る。顔の両脇に手をつかれ、その中に閉じ込められるとわたしの心臓がドキドキ煩い。

「鍵閉め忘れてたけど、それでもそんなことないって言いきれんのかよ」
「そ、それは…」
「俺の言う通りじゃん」
「なによ!わたしのほうが年上なのに、生意気っ!」
「ゆきって立場全然分かってねぇよな」

そう言って、赤也は乱暴にわたしの唇を奪った。逃げようとしても力が強くて振り解けなくて、赤也の舌がわたしの逃げる舌を追いかけて絡みついて離さない。

「ふ、んっ…ゃ…ぁ…」

くちゅくちゅと二人の唾液が混じり、飲みきれない唾液が顎を伝う。頭がぼーっとして抵抗することも考えることも出来ず、赤也のキスに溺れる。ゆっくり唇が離れると二人の間を透明の糸が繋ぎ、どんなに激しかったかを物語るようだった。

「これで分かったろ?ゆきは女で、男の力じゃ敵わねぇってこと」
「だからって、こんなキスしなくてもいいじゃん…」

体も顔も熱くて、頭がどうにかなりそうで赤也をまともに見れない。

「なに、俺を煽ってんの?」

ぐいっと腕を引っ張られ、次に見えた景色は赤也と天井。

「な、なに…?」
「そんな顔して、誘ってるとしか思わねぇんだけど」

そう言って、わたしの首に顔を埋める赤也の髪が頬に当たって擽ったい。

「これだから一人で留守番なんて、危なっかしくてさせれねぇんだよ」

服の下に入れられた手が冷たくて気持ち良く、これから行われるであろう行為に胸を高鳴らせ目を瞑った。


2013.05.05

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