みじかいゆめ

□始まっていた恋
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見えるのはブン太と天井。どれほど時間が経ったのだろう…いや、そんなに時間は経っていないのかもしれない。ただ、わたしに跨っているのは友達のブン太で、こんな状況は自分の中では想像もつかないことであって…何が何だか分からない。取り敢えず自分はすごく混乱しているということだけは分かる。一旦整理すると、まずわたしは幼馴染みで小さい頃から仲のいいブン太の家に遊びに行った。ブン太の弟たちとも結構遊んで、疲れたからブン太の部屋でゆっくりする事にした。ゲームしたり雑誌見たりしてて、笑ってたのにわたしの「昨日、仁王とキスした」という何気ない一言でブン太の顔色が変わった。そして、急に押し倒され今に至る。

「仁王と何で?」

冷たく言うブン太は、すごく怒ってて…こんなブン太見た事ない。

「いや…王様ゲームみんなでしてて、わたしと仁王があたっちゃって、軽い感じで…」

仁王とは、ふざける仲で最近みんなで王様ゲームして遊んでた。最初は普通の命令ばっかだったけど、やっぱり男女が一緒になるとそういう方向に持っていく奴がいて、みんな彼氏も彼女もいないからノッちゃうし、しないとノリ悪いって思われるし。

「ゆきは、軽い感じで誰とでもそんな事出来るんだな」
「だってゲームだし!ていうか、そろそろどいて欲しいんだけど…」

じっと俯いたまま動かないブン太の顔は見えなくて、何を考えているのか分からない。

「誰とでも出来るんなら、俺とも出来るよな?」
「え」
「じゃあ、俺ともキスする?」

顔を上げたブン太は悲しそうな顔してて、だんだん近付いてくるブン太の顔をわたしはやんわり押し返した。

「何でそんなこと言うの?」

けれど、ブン太に手首を掴まれ床に押さえ付けられて抵抗が出来なくなってしまった。

「誰でもいーんだろい?」
「ちょ、ブン太!」

ぐっと唇を塞がれた。

「ふぅっ…ゃ…」

無理矢理こじ開けられた唇の隙間からブン太の舌が入ってきて、わたしの舌に絡みつく。抵抗しようと足をバタつかせても、ブン太の力は案外強くてびくともしない。ちゅっと音がして、唇が離れると泣きそうな顔したブン太がいて、ゆっくりとわたしの上から起き上がると、どかっとベッドに座った。

「…ぶん、た?」
「わりぃ…」

そう謝るブン太は大きな溜め息をつくと、わたしを見つめた。そのブン太の目にドキッとする。

「俺、ゆきのこと好きだ」
「へ…?」
「小さい頃からずっと好きだ」

思いがけないブン太の告白にまた頭が回らない。混乱していると、ふわっとわたしをブン太が抱き締めた。甘い匂いがする。

「仁王とキスなんかすんなよ」
「え、あ…ごめん…」

顔が熱い、ドキドキする。

「絶対俺のこと好きにさせてやるからな。だからシクヨロ」

そう言って、ウインクするブン太は悪戯っぽく笑った。あれ…ブン太がかっこいい。こんなにかっこよかったっけ?そんなことを考えていると、急にブン太が大声出すからびっくりする。

「あー、でも…ゆきのファーストキスは、絶対俺のだと思ってたのに」
「えっと…初めてじゃないよ」
「…は?」
「だから、わたし初めてじゃなかったの」

ブン太は、少し目を見開いてびっくりした表情でわたしを見つめた。

「でも…は?だってゆき、付き合ったことねぇだろい?じゃあ誰と…」

考え込むブン太がおかしくて、吹き出すと何笑ってんだよと言うような顔して眉間に皺寄せた。

「ブン太だよ」
「え?」
「幼稚園の時、寝てるブン太にキスしたことあるの」

そう言えば、ブン太は顔を赤くした。あの時、今日みたいにブン太の家に遊びに行くと、ブン太はお昼寝してて、寝てるブン太が可愛くて吸い寄せられるようにキスした事覚えてる。

「だから、初めてはブン太ってこと」

わたしまで恥ずかしくなって、顔が熱い。

「…もう一回キスさせろい」

わたしの返事を聞くより先に、ブン太の唇がわたしのに重なった。わたしはブン太の事もともと好きだったのかもしれない。いるのが当たり前で、近い距離のせいで気付かなかったのかもしれない。だって、このドキドキは仁王の時は全然なくて、でもブン太とのキスはドキドキする。三回目のキスは、優しくて溶けてしまいそうなそんなキスだった。
――翌日、ブン太が仁王にキスしたってすごく話題になった。ブン太になんで仁王とキスしたのか聞いてみたら、「ゆきのキス、返してもらっただけ」だって。 わたしの為に頑張るブン太が可愛いから、好きだってことはまだ内緒にしておこうかな。


2013.05.10

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