みじかいゆめ

□お見舞いに行こう
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「ブン太、大丈夫?」

風邪をひいたブン太のお見舞いに来た。ブン太は、ちょっと顔が赤くておでこには濡れたタオルが置かれていて、でも、見た目に反して意外と元気そうなブン太は暇だったらしく、わたしが来た事を喜んでいた。

「なんか食うもんない?」
「みかん持ってきたよ」
「みかんかよー。俺、甘いもんが好きなの知ってんだろい」
「贅沢言わないの!」
「あー、ケーキ食いてぇ」

本当に病人なのかと思うくらい元気なブン太は、甘いものが食べたくて仕方ないらしい。

「病人なんだから大人しくしないと」
「熱もあるし、体力使うんだぜ。そういう時は甘いもんだろい」
「いや、それはブン太だけだよ」

風邪ひいてたらあんまり食欲ないものだけどブン太は違うらしい。「そうだ!」と何か思い付いたのか、ブン太は勢いよく上半身を起こし、わたしに手招きした。

「お前、ちょっとこっち来いよ」

何だろうとブン太に近寄ると、わたしの首に手を回しぐっと引き寄せ「いただきます」と言ったと思ったら、わたしの唇にブン太の唇が重なった。ゆっくり唇が離れると悪戯っぽく笑うブン太は満足そうで、わたしはただただ赤くなるばかり。

「甘いもんここにあった」

そう言って、またキスをしてくるブン太の風邪が私にうつりませんようにと心の中でお願いした。


2013.04.28

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