みじかいゆめ

□お見舞いに行こう
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ピンポーンとインターホンを押すと、辛そうな顔した仁王が出てきた。仁王は彼氏で三日前に喧嘩して以来、わたしは顔を合わせないように避けていた。そんな今日、丸井くんが黄色い悲鳴とともに私の教室に現れて、仁王が風邪ひいて休んだことを教えてくれた。

「久しぶりじゃのう」
「三日会ってないだけじゃない」
「そうだったか?まあ、入りんしゃい」

中に入ると二階に上がり仁王の部屋に案内された。

「なんか食べた?」
「いや、なんも」
「ちゃんと食べないと風邪治らないよ!いちご持ってきたから食べよ」

ガサガサといちごを出そうとした手を仁王に掴まれた。

「なに?」
「この前はすまんかった。許してくれんか?」
「反省してる?」
「反省しとる」
「うん、もういいよ。いちご食べて早く元気になろ」

弱々しかった仁王の雰囲気が急に変わったような気がした。

「もう元気じゃ」
「え?」

引き寄せられぎゅうっと抱き締められ、クツクツと笑う仁王はいつもの仁王で…何だか元気そう。

「仁王?」
「風邪なんてひいとらん。お前さんが電話にも出てくれんけ、風邪ひいたフリしとった。こうでもせんと、話してくれんじゃろ?」

さっきより強く抱き締められて苦しい。

「お前さんにとってはたった三日だったかもしれんけど、俺にはお前さんのおらん三日は長かった」

そう言って、仁王は腕の力を弱めるとわたしに優しく口付けをし、また強く抱き締めた。

「仁王…いつまで抱きついてるの?」
「俺の充電が出来るまで」
「それっていつまでかかるの?」
「明日の朝までかかるなりー。だから今日はお泊りじゃな」
「え?」

気が付けば上には仁王の顔とその背景には天井、背中にはふかふかの布団で仁王の香りがする。

「今日は、帰さんぜよ」

妖しく笑う仁王にドキンと胸が跳ねた。


2013.04.29

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